著者
平本 毅 高梨 克也
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.39-56, 2015
被引用文献数
1

本稿では日本科学未来館で2011年8月に公開された展示物『アナグラのうた――消えた博士と残された装置』制作チームの活動場面の会話分析から, チームのメンバーが想像を「共有」する際に用いる1つのプラクティスを明らかにする. 制作チームのメンバーは展示の現場で将来的に生じる種々の問題を想像して発見し, 意識を共有し, 解決していくことを通じて展示物を形作ってゆく. 本稿ではこの活動の中でメンバーが頻繁に用いる, 想像を「共有」するという行為の記述を可能にするような1つのプラクティスに着目する. 展示やそこで生じる入場者の動きを演じながら他のメンバーに説明するとき, 制作チームのメンバーはしばしば頭部を捻って聞き手を「振り向く」. この「振り向き」はランダムに生じるのではなく, 語りの特定の位置で, 想像を「共有」しようとしていることが理解可能なかたちで行われる. 「振り向き」は語りの, とくに想像を「共有」することが相互行為上の課題となることが聞き手にわかる位置で生じる. このとき語り手の演技は進展を止め, これを背景にして頭部の動きで聞き手にはたらきかけることにより, 想像の「共有」を求める. これにたいして聞き手はしばしば, このはたらきかけに応じていることがわかるかたちで反応を返し, 「想像の共有」を達成する.

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