- 著者
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島崎 邦彦
- 出版者
- 日本地球惑星科学連合
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2016年大会
- 巻号頁・発行日
- 2016-03-10
日本海西部(能登半島以西)の「最大クラス」津波の断層モデル(国交省, 2014)は、過小評価であり再検討が必要である(島崎, JpGU, 2015)。過小評価の原因は、入倉・三宅式(2001)にある。この式は断層面積から地震モーメントを推定する際に用いられるが、西日本に多く分布する、上部地殻を断ち切るような高角の断層では地震モーメントが過小評価となる。長さが同じ断層で比べると、低角の断層に比べて高角の断層では、断層面積が小さく、地震モーメントや、ずれの量の平均値が小さくなる。島崎(JpGU, 2015)は過小となる理由として次の二つをあげた。1. 断層の長さや面積などの断層パラメターは、地震発生後に得られるものであって、事前に推定できる値とは異なり、大きくなることが多い。2. 断層の幅を14kmと固定した場合、入倉・三宅式を変形して得られる式(地震モーメントが断層長さの二乗に比例する式)の係数が、武村式(1998)や山中・島崎式(1990)の係数の1/4程度となる。本講演では、2.をさらに検討した。すなわち、静的変形の実測値が、入倉・三宅式を用いた断層モデルで説明可能かどうかを調べた。測量によって地震時の静的変形が観測されている1927年北丹後地震、1930年北伊豆地震、1943年鳥取地震について、既存の断層面積の推定値(Abe, 1978; Kanamori, 1973)から、入倉・三宅式を用いて平均的なずれの量を求め、これから推定される変形が実測値と調和的かどうかを検討した。その結果、入倉・三宅式では実測値の1/4以下の変形しか説明できないことがわかった。以上から、次のように結論することができる。日本の上部地殻を断ち切るような高角の断層で発生する大地震の地震モーメントの推定には入倉・三宅式を用いるべきではない。