著者
野津 翔太 野村 英子 石本 大貴 本田 充彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

原始惑星系円盤(以下、"円盤")は、⽐較的単純な分⼦種(e.g., H2O, CO, CO2, HCN)から複雑な有機物(COMs)まで様々な分⼦種を含む。最近ではSpitzer宇宙望遠鏡や、地上の⼤型望遠鏡(e.g., VLT, Keck)による⾚外線分光観測などで、⽐較的単純な分⼦種の様々な輝線が検出され始めている (e.g., Pontoppidan et al. 2010a&b, Mandell et al. 2012)。円盤はほぼケプラー速度で回転しているため、円盤から放射される輝線はドップラーシフトを受け広がっている。この輝線のプロファイル形状の解析から、輝線放射領域の中⼼星からの距離の情報が得られる。これまで我々は、円盤の化学反応ネットワーク計算と放射輸送計算の⼿法を⽤いて、H2O輝線プロファイルの観測から円盤内のH2O分布、特にH2Oスノーラインを同定する可能性を調べてきた。その結果、アインシュタインA係数が⼩さく、励起温度が⾼いH2O輝線を⽤いた⾼分散分光観測を実施する事で、H2Oスノーラインの位置を同定できる可能性が⽰されている(Notsu etal. 2016a, ApJ submitted & 2016b in prep.)。ここで円盤内では凝結温度の違いにより、分⼦種ごとにスノーラインの位置は異なると考えられる。その為、円盤ガス・ダスト中のC/O⽐は、中⼼星からの距離に応じて変化すると考えられる。例えばH2Oスノーラインの外側では、多くの酸素がH2Oの形でダスト表⾯に凍結する⼀⽅、炭素の多くはCOなどの形で円盤ガス中に留まるので、ガス中でC/O⽐が⼤きくなる。また、近年系外惑星⼤気のC/O⽐が測定され始めているが(e.g., Madhusudhan et al. 2014)、円盤と惑星⼤気のC/O⽐を⽐較する事で、惑星形成理論に制限を加えられる事が⽰唆されている(e.g., Oberg et al.2011)。そこで我々は、これまでの化学反応計算を発展させ、円盤ガス・ダスト中のC/O⽐や、⽐較的単純かつ主要な分⼦種(e.g., H2O, CO, CO2, HCN) の組成分布を調べている。同時に放射輸送計算も進め、C/O⽐などを同定するのに適した輝線の調査を進めている。その結果、同じ分⼦種のアインシュタインA係数(放射係数)や励起温度が異なる輝線を使う事で、円盤内の異なる領域のC/O⽐に制限を加えられる事が分かってきた。例えばHCNの場合、3μm帯の輝線では円盤外側、14μm帯の輝線では円盤内側の構造に迫る事が可能である。これは14μm帯の輝線の⽅が3μm帯の輝線と⽐べ、ダストの吸収係数が⼩さく励起温度が低いため、円盤内側のHCNガスが豊富な領域を追う事が出来るからである。本発表ではまずT-Tauri円盤の場合の解析結果を中⼼に報告し、将来の近-中間⾚外線の分光観測 (e.g., TMT/MICHI, SPICA) との関係についても議論する。また時間の許す範囲で、Herbig Ae星の場合の解析結果の報告と議論も⾏う。

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先ほど無事、自分の口頭講演も終了。終了後も含め質問も色々と頂けたので良かった(^^) https://t.co/oIjPOKHR83

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