著者
武村 俊介 矢部 優 江本 賢太郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

DONETやS-netといった海底地震計ネットワークの登場により、浅部スロー地震を含む海域の規模の小さな地震現象も多数捉えられ、基礎的な解析が進んでいる(例えば、Nakano et al., 2015, 2018; Nishikawa et al., 2019; Tanaka et al., 2019; Yabe et al., 2019)。しかし、それらの研究の多くは1次元構造による解析が主であり、海洋堆積物、海水や短波長構造の影響は考慮されておらず、不正確な震源パラメータが推定されている可能性を排除しきれない。本研究では、現実的な3次元地下構造モデルを用いて地震動シミュレーションを行い、海底地震計記録に含まれる海洋堆積物、海水や短波長構造の影響を評価し、震源パラメータ推定への影響を明らかにすることを目的とする。紀伊半島南東沖に展開されたDONET観測点を含む120x82.5x45 km3の領域を0.015 km格子で離散化し、OpenSWPC(Maeda et al., 2017)を用いて地震動シミュレーションを実施した。3次元地下構造モデルは、地震基盤以深についてKoketsu et al. (2012)を採用した。付加体内のS波速度構造モデルは、Tonegawa et al. (2017)による1次元S波構造モデルを5層モデルで近似し、各層の深さをGMT surfaceにより内挿および外挿し、3次元付加体構造モデルを構築した。最小S波速度を0.5 km/sとし、5Hz以下の地震動伝播を評価した。ここでは、浅部超低周波地震のCMT解(Takemura et al., 2019)を用い、0.2秒の三角関数を震源時間関数とすることで、浅部低周波微動の震源とした。通常の地震については、それらと近い位置で推定されたCMT解を参照し、同じ震源時間関数を仮定した。計算結果に1-5 Hzのバンドパスフィルターをかけ、RMSエンベロープを合成し、その様子を調べた。0.2秒の震源パルスであったにも関わらず、地震動シミュレーションにより得られたDONET観測点のエンベロープのS波継続時間は、震央距離10 kmを超えると10秒以上と長い。低速度な付加体にS波がトラップされたことで、継続時間が長大化したと考えられる。さらに、S波の継続時間は距離の増大に伴い増加する傾向にあり、例えばYabe et al. (2019)のように、これらのエンベロープの半値幅をそのまま震源の破壊継続時間と解釈すると過大評価となる場合がある。特に浅部低周波微動の場合、3次元不均質構造を考慮した解析、あるいは観測点を吟味して解析することが重要である。謝辞 F-netとDONETの観測記録(https://doi.org/10.17598/NIED.0005, https://doi.org/10.17598/NIED.0008)を利用しました。海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いて地震動シミュレーションを行いました。本研究は、JSPS科研費19H04626の助成を受けて実施されました。

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#JpGUAGU2020 発表その2。結構リアルな構造を入れて、浅部微動の3次元地震波伝播シミュレーションをしました。海域の地震の正確な震源パラメータ推定へ向けた研究です。 海域で発生する微小地震や低周波微動の震源パラメータ推定への不均質構造の影響 https://t.co/SadoAXxaTU

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