著者
江本 賢太郎 汐見 勝彦 那須 健一
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.35-41, 2019-06-05 (Released:2019-08-03)
参考文献数
23

Spatial distribution of seismicity has hitherto been visualized on two-dimensional maps and vertical cross-sections along certain lines so far. Owing to the advances in technology, we have developed a mobile application for iPhone and iPad devices, which can display the seismicity of Japan in three-dimensional (3D) view. Each hypocenter is plotted as a 3D spherical object whose color and size represented its depth and magnitude, respectively. The geometry of the Philippine Sea Plate and the Pacific Plate can be plotted as 3D polygons with the hypocenters, simultaneously. In addition to those plate boundaries, the topography of Japan and the ocean bathymetry around it are also plotted as a 3D polygon. The 3D image of the hypocenters and plate geometries helps users to perceive intuitively the spatial distribution of earthquakes such as that many earthquakes occur along the subducting plates. Moreover, the spatiotemporal distribution of seismicity can be seen by the time-lapse animation of hypocenters. The hypocenter catalog can be downloaded through the Internet by using the account of NIED MOWLAS. More than one month’s earthquakes (18,000 events) can be displayed smoothly.
著者
武村 俊介 矢部 優 江本 賢太郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

DONETやS-netといった海底地震計ネットワークの登場により、浅部スロー地震を含む海域の規模の小さな地震現象も多数捉えられ、基礎的な解析が進んでいる(例えば、Nakano et al., 2015, 2018; Nishikawa et al., 2019; Tanaka et al., 2019; Yabe et al., 2019)。しかし、それらの研究の多くは1次元構造による解析が主であり、海洋堆積物、海水や短波長構造の影響は考慮されておらず、不正確な震源パラメータが推定されている可能性を排除しきれない。本研究では、現実的な3次元地下構造モデルを用いて地震動シミュレーションを行い、海底地震計記録に含まれる海洋堆積物、海水や短波長構造の影響を評価し、震源パラメータ推定への影響を明らかにすることを目的とする。紀伊半島南東沖に展開されたDONET観測点を含む120x82.5x45 km3の領域を0.015 km格子で離散化し、OpenSWPC(Maeda et al., 2017)を用いて地震動シミュレーションを実施した。3次元地下構造モデルは、地震基盤以深についてKoketsu et al. (2012)を採用した。付加体内のS波速度構造モデルは、Tonegawa et al. (2017)による1次元S波構造モデルを5層モデルで近似し、各層の深さをGMT surfaceにより内挿および外挿し、3次元付加体構造モデルを構築した。最小S波速度を0.5 km/sとし、5Hz以下の地震動伝播を評価した。ここでは、浅部超低周波地震のCMT解(Takemura et al., 2019)を用い、0.2秒の三角関数を震源時間関数とすることで、浅部低周波微動の震源とした。通常の地震については、それらと近い位置で推定されたCMT解を参照し、同じ震源時間関数を仮定した。計算結果に1-5 Hzのバンドパスフィルターをかけ、RMSエンベロープを合成し、その様子を調べた。0.2秒の震源パルスであったにも関わらず、地震動シミュレーションにより得られたDONET観測点のエンベロープのS波継続時間は、震央距離10 kmを超えると10秒以上と長い。低速度な付加体にS波がトラップされたことで、継続時間が長大化したと考えられる。さらに、S波の継続時間は距離の増大に伴い増加する傾向にあり、例えばYabe et al. (2019)のように、これらのエンベロープの半値幅をそのまま震源の破壊継続時間と解釈すると過大評価となる場合がある。特に浅部低周波微動の場合、3次元不均質構造を考慮した解析、あるいは観測点を吟味して解析することが重要である。謝辞 F-netとDONETの観測記録(https://doi.org/10.17598/NIED.0005, https://doi.org/10.17598/NIED.0008)を利用しました。海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いて地震動シミュレーションを行いました。本研究は、JSPS科研費19H04626の助成を受けて実施されました。
著者
江本 賢太郎 佐藤 春夫
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

短周期地震波は,地球内部の短波長不均質構造による散乱により複雑な波形を示す.例えば,エンベロープ拡大現象や,最大振幅の散乱減衰,コーダ波の励起などが挙げられる.これらを説明するには,ランダムな不均質媒質中での波動伝播を統計的に記述し,波形エンベロープを直接導出する方法が有効であり,ボルン近似を用いた輻射伝達理論や放物近似に基づくマルコフ近似理論が用いられてきた.手法の妥当性の検証には波動方程式の差分法計算との比較が必要であるが,3次元では計算コストの問題からこれまでほとんど行われていない.本研究では,地球シミュレータを用いた3次元差分法計算によりランダム媒質中のスカラー波伝播を再現し,その特徴を調べ統計的手法と比較する.ランダムな速度ゆらぎは指数関数型自己相関関数で特徴づけられるとし,ゆらぎの強さは5%,相関距離 a は1kmと5kmとした.差分法での解析対象周波数は1.5Hzとし,空間刻み0.08km,平均伝播速度4km/sとすると,1波長あたり33グリッドとなり数値分散の影響は無視できる.差分計算は空間4次・時間2次精度とする.計算領域は1辺307kmの立方体とし,中心からRicker波を等方に輻射する.観測点は伝播距離25, 50, 75, 100kmに各距離に20個配置する.この大きさのランダム不均質媒質を一度に作成するのは困難であるため,異なるシードで作成した小さなランダム媒質をなめらかにつなげて全体を構成する.同様に作成した計6個のランダム不均質媒質における計算結果をアンサンブルとして用いる.まず,差分トレースをスタックした平均2乗エンベロープを統計的手法と比較する.相関距離1kmの場合,ボルン近似を用いた輻射伝達理論は,立ち上がりからコーダまで差分エンベロープをよく再現することができた(計算にはモンテカルロ法を用いた).一方,相関距離5kmの場合,ピーク付近のエンベロープは改良マルコフ近似(Sato, 2016)でよく再現でき,コーダ部分はボルン近似を用いた輻射伝達理論で再現できることを確認した.中心波数をkcとすると,前者はakc=2.3,後者はakc=12であり,後者はボルン近似よりもマルコフ近似が適している領域である.次に,エンベロープを構成する差分トレースの2乗振幅分布を調べる.直達波到達直後は対数正規分布を示すのに対し,コーダ部分は指数分布に従うことが分かった.これは,エンベロープを構成する散乱波が,前方散乱波からランダムな分布へと変化していくことを示している.また,相関距離が小さいほど,指数分布へと変化するまでの時間が早くなり,相関距離1km,伝播距離100kmではエンベロープのピーク付近も指数分布となった.また,各観測点の周りに小さな3つの正12面体の頂点となるようにアレイを設置し,各時刻においてFK解析から散乱波の到来方向を調べた.震源方向を基準とした散乱波の入射角は,初動到達後から単調増加した.差分計算は経過時間50秒まで行ったが,この範囲内では,入射角のピーク値の平均は60°程度まで増加したが,等方的にはならなかった.つまり,エネルギーフラックスが等方的になる前から,2乗振幅は指数分布に従うことがわかった.相関距離が1kmの方が5kmと比べてコーダ振幅の励起量が多いが,入射角分布は両者に顕著な違いは見られなかった.
著者
山本 希 三浦 哲 市來 雅啓 青山 裕 筒井 智樹 江本 賢太郎 平原 聡 中山 貴史 鳥本 達矢 大湊 隆雄 渡邉 篤志 安藤 美和子 前田 裕太 松島 健 中元 真美 宮町 凛太郎 大倉 敬宏 吉川 慎 宮町 宏樹 柳澤 宏彰 長門 信也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

蔵王山は,東北日本弧中央部に位置し宮城県と山形県にまたがる第四紀火山であり,現在の蔵王山の火山活動の中心となる中央蔵王においては,火口湖・御釜周辺での火山泥流を伴う水蒸気噴火など多くの噴火記録が残されている.一方,蔵王山直下では,2011年東北地方太平洋沖地震以後,深部低周波地震の活発化や浅部における長周期地震や火山性微動の発生が認められ,今後の活動に注視が必要であると考えられる.そのため,地震波速度構造や減衰域分布といった将来の火山活動推移予測につながる基礎情報を得るために,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の一環として,人工地震を用いた構造探査実験を実施した.本人工地震探査は,全国の大学・気象庁あわせて9機関から21名が参加して2015年10月に行われ,2箇所のダイナマイト地中発破 (薬量200kgおよび300kg) によって生じた地震波を132点の臨時観測点 (2Hz地震計・500Hzサンプリング記録) および定常観測点において観測した.測線は,屈折法解析による火山体構造の基礎データの取得およびファン・シューティング法的解析による御釜周辺の地下熱水系の解明を目指し,配置設定を行った.また、地中発破に加え、砕石場における発破も活用し、表面波解析による浅部構造推定の精度向上も目指した.得られた発破記録から,解析の第一段階として,初動到達時刻を手動検測して得られた走時曲線のtime term法解析を行った結果,P波速度5.2~5.5 km/sの基盤が地表下約0.5kmの浅部にまで存在することが明らかとなった.また,本人工地震探査時および2014年に予備観測として行った直線状アレイを用いた表面波の分散性解析の結果も,ごく浅部まで高速度の基盤が存在することを示し,これらの結果は調和的である.一方,ファン状に配置した観測点における発破記録の初動部および後続相のエネルギーを発破点からの方位角毎に求め,御釜・噴気地帯を通過する前後の振幅比から波線に沿った減衰を推定した結果,御釜やや北東の深さ約1km前後に減衰の大きな領域が存在することが示された.中央蔵王においては,これまで主に地質学的手法により山体構造の議論が行われてきており,標高1100m以上の地点においても基盤露出が見られることなどから表層構造が薄い可能性が示唆されてきたが,本人工地震探査の結果はこの地質断面構造とも整合的である.一方で,得られた速度構造は,これまで蔵王山の火山性地震の震源決定に用いられてきた一次元速度構造よりも有意に高速度であり,今後震源分布の再検討が必要である.また,御釜やや北東の噴気地帯直下の減衰域は,長周期地震の震源領域や全磁力繰り返し観測から推定される熱消磁域とほぼ一致し,破砕帯およびそこに介在する熱水等の流体の存在を示唆する.今後のさらなる解析により,震源推定の高精度化など,火山活動および地下流体系の理解向上が期待される.