著者
神林 翔太 張 勁 成田 尚史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

陸域から海洋への放射性セシウム(Cs)の供給源として河川水以外に海底地下水湧出(Submarine Groundwater Discharge: SGD)の存在が指摘されている。しかし,採取が容易な河川水に対し,SGDは一般的に目に見えない現象であるため試料採取が困難であり、これまで定量的な評価が行われていなかった。本研究では,汽水湖「松川浦」で収集した海底堆積物中の間隙水の化学分析を通じてSGDを含めた陸域から沿岸域への放射性Csの流入量を見積もることを目的とした。間隙水及び同地点の直上水に含まれる137Cs濃度はそれぞれ1,398 mBq/L, 117.7 mBq/Lであった。この結果は,海底堆積物から間隙水中に有意な量の放射性Csが溶脱していることを示している。また,フィックの法則を用いてフラックスの計算を行った結果,堆積物表層から直上水へ11.3 mBq/cm2/hの137Csの逸出が起きる事が推定された。さらに,本研究で得られた堆積物-間隙水間の分配比と松川浦の表層堆積物に含まれる137Cs濃度の平均値を用いて湖水中に逸出される137Cs フラックスを見積もると0. 08 GBq/dayと推定され,松川浦に供給される137Csの大部分を占めていることが明らかになった。本研究の結果から,沿岸海域には海水が海底下に潜り,堆積物間隙水の逸出という形で再び海洋へと流出する再循環水(Recycled Submarine Groundwater Discharge: RSGD)によって多量の放射性Csが供給されており,今後,沿岸海域や外洋における放射性Csの評価に供給源としてSGDを把握する重要性が示唆された。

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JpGU-AGU Joint Meeting 2017/海底地下水湧出による放射性セシウムの沿岸海域への移行:間隙水の地球化学的特徴によるアプローチ https://t.co/df07QxD9YI ♯東京電力福島第一原発事故

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