著者
丹下 佑芙子 木下 真孝 成田 尚史 張 勁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.237, 2011

富士山は, 静岡県と山梨県の県境に位置する標高 3776 mの活火山である. 富士山の総降水量は年間22億トンであり(山本, 1971),富士山は, それらを起源とした豊かな地下水資源を有しており,山麓には, 北部の富士五湖や忍野八海,東部の平山水源湧水,南部の柿田川湧水群や西部の白糸の滝やなど数多くの湧水群が点在している. しかし, 三島市では, 高度成長期以降地下水位の低下や湧水を集め流れる河川水の水質悪化等が報告され, 湧水を取り巻く状況も大きく変化しつつある. そこで本研究では, 富士山麓の湧水の水質測定を通して, 人類活動の影響に着目して考察を行なった.
著者
神林 翔太 張 勁 柴沼 成一郎 成田 尚史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.181, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所事故により飛散し,陸上に沈着した放射性セシウム(Cs)は水・物質循環に伴う移動で海洋へ移行するため,今後は海洋への移行予測が重要になる。水・物質循環の経路において,汽水域は河川水と海水の混合領域であり,塩分の急激な変化に伴う吸着・溶脱等により化学物質の濃度が大きく変化するため,海洋への移行を考える上で汽水域での放射性Csの動態把握は重要である。しかし,先行研究では大河川や沿岸域での動態把握に留まり,汽水域での挙動は明らかにされていない。本研究では,汽水域での放射性Csの動態を把握し,「河川-汽水-海洋」の系における移行挙動を明らかにするため,幅広い塩分変動をもつ海跡湖「松川浦」において現場観測を行った。
著者
神林 翔太 張 勁 成田 尚史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

陸域から海洋への放射性セシウム(Cs)の供給源として河川水以外に海底地下水湧出(Submarine Groundwater Discharge: SGD)の存在が指摘されている。しかし,採取が容易な河川水に対し,SGDは一般的に目に見えない現象であるため試料採取が困難であり、これまで定量的な評価が行われていなかった。本研究では,汽水湖「松川浦」で収集した海底堆積物中の間隙水の化学分析を通じてSGDを含めた陸域から沿岸域への放射性Csの流入量を見積もることを目的とした。間隙水及び同地点の直上水に含まれる137Cs濃度はそれぞれ1,398 mBq/L, 117.7 mBq/Lであった。この結果は,海底堆積物から間隙水中に有意な量の放射性Csが溶脱していることを示している。また,フィックの法則を用いてフラックスの計算を行った結果,堆積物表層から直上水へ11.3 mBq/cm2/hの137Csの逸出が起きる事が推定された。さらに,本研究で得られた堆積物-間隙水間の分配比と松川浦の表層堆積物に含まれる137Cs濃度の平均値を用いて湖水中に逸出される137Cs フラックスを見積もると0. 08 GBq/dayと推定され,松川浦に供給される137Csの大部分を占めていることが明らかになった。本研究の結果から,沿岸海域には海水が海底下に潜り,堆積物間隙水の逸出という形で再び海洋へと流出する再循環水(Recycled Submarine Groundwater Discharge: RSGD)によって多量の放射性Csが供給されており,今後,沿岸海域や外洋における放射性Csの評価に供給源としてSGDを把握する重要性が示唆された。