著者
アンジュロ オディシア 出口 敦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.604, pp.93-100, 2006
参考文献数
14

本研究では、既稿(ANGELO and DEGUCHI 2004)におけるボリビア・ラパス市の住宅類型の研究とスペイン殖民都市の都市基盤の成り立ちに関する研究(ANGELO, LOPEZ and DEGUCHI 2005)を基に、スペイン殖民都市の歴史的都心地区の例としてラパス市の都心部の地区を対象にして、植民地時代からの伝統的住宅タイプであるコンベンティロとその住宅タイプが多数残る同地区の物的環境の実態と居住者からみた課題や意向の両面を独自に調査した。現状の土地利用からオフィスなどの新規開発の多い東部と老朽化した住宅が多数残存する西部の2つの区域に分かれるが、物的環境と居住者評価の両面から設定した評価指標を用いて両区域の相違点と相違点を明らかとした。一見して、西部区域の方が老朽化による住環境の悪化が進んでいるように見えるが、東部地区の居住者の満足度の方が相対的に低い等の新たな知見が得られた。本研究では、植民地時代に建設された都市基盤と住宅を継承する当該地区とコンベンティロの変容と居住環境の実態を独自の調査により初めて明らかとしている。結論では、当該地区を一体として捉えるのではなく、地区内でも区域によって異なる物的環境の実態と居住者の意識の傾向を十分把握した上で、居住環境改善に取り組む必要がある点を指摘している。