著者
福島 昭治 魏 民 アンナ 梯 鰐渕 英機
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.119-128, 2008 (Released:2008-10-07)
参考文献数
14

魚や肉などの焼けこげに含まれている2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f ] quinoxaline(MeIQx)のラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した.その結果,MeIQx?DNA 付加体形成は微量からみられ,より高い用量で8-hydroxy-2′-deoxyquanosine 形成,lacI 遺伝子変異,イニシエーション活性等が誘発された.また,肝臓の前腫瘍性病変であるglutahione S-transferase placental(GST-P)陽性細胞巣は,さらにより高い用量で誘発された.N- ニトロソ化合物であるN-nitrosodiethylamine やN-nitrosodimethylamine でもGST-P 陽性細胞巣の発生は微量では発生しなかった.次に大腸発がん物質である2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)のラット発がん性を検討すると,大腸粘膜におけるPhIP-DNA 付加体形成は微量から認められたが,前腫瘍性病変の代替マーカーである変異クリプト巣は,かなりの高用量でのみ誘発された.非遺伝毒性肝発がん物質であるphenobarbital は,GST-P 陽性細胞巣の発生を高用量では増加,逆に低用量ではその発生を抑制した(ホルミシス現象).これらの結果から,遺伝毒性発がん物質には閾値,少なくとも実際的な閾値が,また,非遺伝毒性発がん物質には真の閾値が存在すると結論する.