著者
福島 昭治 鰐渕 英機 魏 民 森村 圭一朗
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.451-455, 2006-06

膀胱発癌物質であるBBNによる実験的につくったマウスBBN膀胱癌,砒素膀胱癌の本態,チェルノブイリの原子力発電所事故による放射能汚染地区住民に発生した膀胱病変について概説し,ハイリスクな膀胱癌の自然史を鳥瞰的に解説した.マウスBBN膀胱癌ではp53は癌のプロモーション,プログレッション過程に重要な役割を担い,浸潤性膀胱癌は多中心的に発生する.有機砒素のDMAはラットに膀胱癌を発生させるが,ラット膀胱癌におけるp53変異は発癌物質によって異なる.チェルノブイリ膀胱病変は持続的な放射能曝露によるもので,p53異常や酸化的ステレスの関与,ユビキチンシステムの亢進がみられる
著者
福島 昭治 鰐渕 英機 森村 圭一朗 魏 民
出版者
日本環境変異原学会
雑誌
環境変異原研究 (ISSN:09100865)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-79, 2005 (Released:2005-12-26)
参考文献数
11

Until recently it has been generally considered that genotoxic carcinogens have no threshold in exerting their potential for cancer induction. However, the non-threshold theory can be challenged with regard to assessment of cancer risk to humans. In the present study we show that food-related genotoxic hepatocarcinogens, heterocyclic amines and N-nitroso compounds at low doses do not induce preneoplastic lesions and cancer-related markers in rat medium-term carcinogenicity bioassay. The results imply existence of a threshold, at least practical one, for carcinogenicities of genotoxic carcinogens.
著者
福島 昭治 魏 民 アンナ 梯 鰐渕 英機
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.119-128, 2008 (Released:2008-10-07)
参考文献数
14

魚や肉などの焼けこげに含まれている2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f ] quinoxaline(MeIQx)のラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した.その結果,MeIQx?DNA 付加体形成は微量からみられ,より高い用量で8-hydroxy-2′-deoxyquanosine 形成,lacI 遺伝子変異,イニシエーション活性等が誘発された.また,肝臓の前腫瘍性病変であるglutahione S-transferase placental(GST-P)陽性細胞巣は,さらにより高い用量で誘発された.N- ニトロソ化合物であるN-nitrosodiethylamine やN-nitrosodimethylamine でもGST-P 陽性細胞巣の発生は微量では発生しなかった.次に大腸発がん物質である2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)のラット発がん性を検討すると,大腸粘膜におけるPhIP-DNA 付加体形成は微量から認められたが,前腫瘍性病変の代替マーカーである変異クリプト巣は,かなりの高用量でのみ誘発された.非遺伝毒性肝発がん物質であるphenobarbital は,GST-P 陽性細胞巣の発生を高用量では増加,逆に低用量ではその発生を抑制した(ホルミシス現象).これらの結果から,遺伝毒性発がん物質には閾値,少なくとも実際的な閾値が,また,非遺伝毒性発がん物質には真の閾値が存在すると結論する.
著者
福島 昭治 鰐渕 英機 森村 圭一朗 魏 民
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理 (ISSN:13499041)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-17, 2005 (Released:2006-03-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

遺伝毒性発がん物質には閾値がないという考え方が定説となっている。このことが正しいかどうかを解決することを意図し、新しい手法による発がん実験を行った。ヘテロサイクリックアミンおよびN-ニトロソ化合物のラット肝あるいは大腸発がんを前がん病変およびがん関連マーカーを指標として検討すると、いずれも発がん物質に反応しない量のあることが判明した。このことから、遺伝毒性発がん物質の発がん性には閾値、少なくとも実際的な閾値が存在すると結論される。