著者
安里 のり子 ウエルトハイマー アンドリュー 根本 彰
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-32, 2011

2006年に出版されベストセラーになった有川浩の『図書館戦争』シリーズを題材にこの小説が日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」に触発されて書かれたことからそこで表現されている暴力的イメージの源泉を分析した。「宣言」は,1953年に埼玉県図書館協会が「図書館憲章案」として提案したものが元になり,1954年の図書館大会および日本図書館協会総会で激論の後に採択された。本稿ではこれらの案文をその社会的背景に照らし分析した結果,有川が「宣言」から読み取ったものは,その文言に込められた当時の図書館員の潜在的なメンタリティーである「権力に抵抗する図書館」という職務理念であると指摘した。また,当時の議論では最初使われた「抵抗」という表現が,検討過程で外的な要因に配慮し,図書館自らの主体性を強調することから他の言葉に置き換えられたことを明らかにした。
著者
安里 のり子 ウエルトハイマー アンドリュー 根本 彰
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-32, 2011-03-30 (Released:2017-05-04)

2006年に出版されベストセラーになった有川浩の『図書館戦争』シリーズを題材にこの小説が日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」に触発されて書かれたことからそこで表現されている暴力的イメージの源泉を分析した。「宣言」は,1953年に埼玉県図書館協会が「図書館憲章案」として提案したものが元になり,1954年の図書館大会および日本図書館協会総会で激論の後に採択された。本稿ではこれらの案文をその社会的背景に照らし分析した結果,有川が「宣言」から読み取ったものは,その文言に込められた当時の図書館員の潜在的なメンタリティーである「権力に抵抗する図書館」という職務理念であると指摘した。また,当時の議論では最初使われた「抵抗」という表現が,検討過程で外的な要因に配慮し,図書館自らの主体性を強調することから他の言葉に置き換えられたことを明らかにした。