著者
横山 雄一 井口 和弘 臼井 茂之 平野 和行 ヨコヤマ ユウイチ イグチ カズヒロ ウスイ シゲユキ ヒラノ カズユキ Yuichi YOKOYAMA Kazuhiro IGUCHI Shigeyuki USUI Kazuyuki HIRANO
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.68-74, 2013-06-30

グリセロールは肝臓における糖新生や脂質合成の材料であるため、肝臓へのグリセロール流入量の変化は様々な代謝経路に変調をきたす。アクアポリン9(AQP9)は、主に肝臓において発現が見られ、水分子のみならず、グリセロールや尿素などの低分子溶質をも透過させるチャネル型膜蛋白質である。AMP-activated protein kinase(AMPK)は生体内のエネルギーセンサーであり、糖・脂質代謝の恒常性維持に働くセリン/スレオニンキナーゼである。本研究では、AMPKの活性化剤である、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1--D-ribonucleoside(AICAR)を、ヒト肝癌由来HepG2 細胞に作用させたところ、AQP9 mRNA の発現量が顕著に減少することを確認した。レポータージーンアッセイや転写因子forkhead boxa2(Foxa2)遺伝子をノックダウンさせた実験の結果から、Foxa2 は、AICAR によるAQP9 遺伝子発現抑制に関わる重要な転写調節因子であることを見出した。AICAR により活性化されたAMPK は、Akt のThr-308 残基とSer-473 残基のリン酸化を促し、それに伴いFoxa2 がリン酸化されて核内から核外へと移行することを明らかにした。したがって、肝臓でのグリセロール輸送の観点からAMPK によるコントロールのもとに、AQP9 は肝臓へのグリセロールの流入量を変化させ、糖・脂質代謝調節に寄与している可能性が示唆された。