- 著者
-
エリオット アンソニー
片桐 雅隆
澤井 敦
- 出版者
- 日本社会学理論学会
- 雑誌
- 現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.67-92, 2010 (Released:2020-03-09)
本論文は、三つの主要な目的をもっている。第ーに(第1節~第3節)、金融、メディア、ハイテク業界などのニューエコノミーにおいて、とりわけ顕著にみられる、地球を席巻する新しい個人主義についての理論を再検討し再呈示すること、そして、この立場が、社会学的なアプローチという点で、他の影響力の大きい立場(ここでは特に、フーコーと彼の継承者によって精綴化された「自己のテクノロジー」の理論と、アンソニー・ギデンズなどによって輪郭が示された「再帰的な個人化」というとらえ方を扱う)とどのように異なるのか、を問うことである。第二に(第4節)、この新しい個人主義の理論の構図を、より一般的に、日本の社会や社会(科)学における展開と関連づけることである。そこではとりわけ、私化や原子化をめぐる従来の議論、公と私の関係をめぐる議論に焦点をあてることになる。そして最後に(第5節)、現代の日本において進行中である社会経済的な変容を検討することで、新しい個人主義のひろがりがもたらすさまざまな矛盾について考察する。そこでは、新しい個人主義の理論が、日本の社会や経済に変化をもたらしている現在のグローパルな変容の内実をいかに有効に問いうるか、を検討する。