- 著者
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クラティラカ クマーラシンハ
- 雑誌
- 崇城大学芸術学部研究紀要
- 巻号頁・発行日
- no.7, pp.129-137, 2014
能の起源は、平安時代から鎌倉時代にかけて栄えた「猿楽」という芸能にある。能は一般に現在能と夢幻能に分けられる。夢幻能では、神や幽霊である主人公が旅人などに昔のことを語って聞かせる。そうした主人公は、最初はありふれた人間の姿を借りて現れ、やがて昔の姿や本来の姿になって登場する。そして「シテ」と呼ばれる主役の演劇が中心におかれ、「ワキ」と呼ばれるゆき役はシテの話を引き出すための演技を行う。夢幻能の呼称は、ワキが見た夢幻によって作品が成立していることに由来している。「ワキ能物」、「修羅物」の多くがこの夢幻能に属している。世阿弥は夢幻能の傑作を数多く世に送り出した。他方、「現在能」に登場する人物の殆どは生きている人間で、夢幻能とは異なり、シテだけでなく、ゆき役も活躍する。親子や男女の情愛とそれに伴う苦悩がつづられている作品や、武士の勇気などを描いた作品が多くみられる。代表的な作品には、曽我兄弟の敵討ちを描いた「夜討ち」「楚歌」や、若き日の源義経、すなわち牛若丸の活躍を描いた「烏帽子折」などがある。