著者
クラティラカ クマーラシンハ
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18839568)
巻号頁・発行日
no.5, pp.95-100, 2011

日本に仏教が伝来したのは紀元6世紀のことである。以来、日本ではさまざまな宗派が誕生し、鎌倉時代には、天台、真言、阿弥陀、禅、日蓮などの宗派も出揃い、仏教が隆盛したといわれる。能芸能にみられる仏教的要素は、主に阿弥陀経や禅宗から影響を受けたものが多く、「道成寺」や「隅田川」などの能には、その2つの宗派の思想が織り込まれているといえる。筆者は、この時代の能楽作家は、鎌倉時代の民衆の苦しみを反映して、人々の憂いを和らげることを目的としていたのであろうと考える。また世阿弥が書いた能楽についての書物にもそうしたねらいがみえる。また能楽には、幽霊や魂などといった架空の存在を頻繁に登場させることによって、観客を仏教的精神世界に導きやすくしているようにもみえる。それは、阿弥陀経(浄土教)が、念仏を唱えることによって穢土から極楽浄土へ生まれ変われると説く手段と共通する部分があるように思える。

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