著者
浜田 純一 松本 淳 ハルヨコ ウリップ シャムスディン ファドリ 山中 大学
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

「海大陸」と呼ばれ、モンスーンなど大規模大気循環の熱源と考えられるインドネシア域では、オランダ統治下の1860年代より、ジャカルタ(当時のバタビア)を始めとした地点で気象観測が実施されてきたが、社会的・経済的な理由によりデータが一般に公開されず、これまで気候学研究の「空白」領域となっていた。しかし、近年、「データレスキュー」活動など、現地の観測研究環境の変化を通して、インドネシアを含む東南アジア域においても、気候変動の解明に資する「日」単位の長期気象データが整備・公開されつつある(例えばSACA&D: Southeast Asia Climate Assessment & Datasetなど)。 <br><br>これらの長期気象データセットに基づき、ジャカルタの気象極端現象の長期変化や、降水極端現象の年々変動とENSOとの関連に関する研究などがインドネシア人研究者自身らにより活発に進められ始めている(Siswanto et al., 2015, &nbsp;Supari et al., 2016, Marjuki et al., 2016など)。また、我々自身も、日降水量データを中心としたインドネシアでの気象データベース構築を内外の研究者との協力の上で進め、海大陸域におけるモンスーン降水の年々変動の動態把握、ENSOや冬季アジアモンスーンとの関連について研究を進めてきている(Hamada et al., 2012, Lestari et al., 2016など)。<br><br>インドネシアの首都であるジャカルタにおいては、気象台が設置された1866年より定常的な観測が開始され(雨量観測は1864年より実施)、150年以上に及ぶ気象観測データが蓄積されている(K&ouml;nnen et al., 1998, Siswanto et al., 2015)。また、これらのデータのデータベース化も進められ、観測開始当初からの日単位の気象データがSACA&D、月降水量に関してもGlobal Historical Climatology Network (GHCN) などで公開されている一方、1990年代以降の近年のデータは、依然、十分に整理されていない状況にある。 従って、本発表においては、近年のインドネシアにおける気候変動研究の動向を概括し、最も長期間のデータが蓄積されたジャカルタに焦点を当て、気象観測資料のデータベース化状況、及びモンスーン降水長期変動に関する初期解析結果について報告する。