著者
白田 由香利 橋本 隆子 チャクラボルティ バサビ
出版者
学習院大学経済学会
雑誌
学習院大学経済論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.31-41, 2016-07

ベイズ推論は,文書のトピック分析を始め,画像のパターン認識のほか,画像を用いた服装コーディネイト推薦,買い物履歴情報からの消費パターン分析など,広い分野で活用されている。本稿では,ベイズ推論の手法を大学ブランドイメージ分析に適用する。我々は,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の代表的アルゴリズムであるギブズサンプラーの実装により,シンプルトピックモデルによるベイズ推論のクラスタリングの過程を可視化するツールを開発した。このツールにより,大学ブランドイメージという共通の知識を共有するデータを対象として,クラスタリングのマルコフ連鎖の変動のようすを可視化する。このような手法のポイントは,共有する知識に基づく分析事例を示し,その事例からその背景にある数学的手法を連想させ,理解させる,ことである。このMCMC における定常状態の連鎖プロセスにおいては,ある大学が2 つのクラスの間を頻繁に行き来するなどの興味深い変動が見られた。こうした可視化により,クラスタリングのツールをただ使って結果を出すだけではなく,その背景にあるギブズサンプラー,シンプルトピックモデル,などの数学プロセスを理解することが可能となる。そうした数学プロセスの理解は,的確な分析に必須であるので,こうした数学教育はベイズ推論において重要と考える。