著者
ネウパネ ダナパテイ 佐々木 茂文 金 辰保 石下 真人 鮫島 邦彦
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.33-39, 2003 (Released:2014-03-15)
参考文献数
24

海抜5200 m 付近の高地に棲息している純系のヤクのミルクから作ったバターの脂肪酸組成とビタミン A およびトコフェロール含量を GLC(気-液ガスクロマトグラフィー)と HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し,ウシバターのそれらと比較した。ヤクバターのコレステロール含量と脂質酸化速度は,それぞれ GLC と重量測定法によって判定した。ヤクバターは,短鎖の飽和脂肪酸を多く含んでいるので強い匂いを有している。脂質中の構成脂肪酸は多い順に16:0, 18:1, 14:0, 18:0, 4:0, 8:0 であった。また,レチノール量は脂肪100 g 中に402.3 μg であった。ウシバターの γ-トコフェロール量は,ヤクバターよりも多く,脂肪100 g 中に440 μg であるが,α-トコフェロール量は,ウシバター(1.9 mg/100 g 脂肪)よりもヤクバター(2.6 mg/100 g 脂肪)の方が多かった。β と δ-トコフェロールはヤクおよびウシバター中にほとんど検出できなかった。ヤクバター中のコレステロール量(325 mg/100 g 脂肪)は,ウシのそれ(223 mg/100 g 脂肪)よりも多かった。ウシバター脂質の酸化は,ヤクのそれに対して速くしかもその度合いは高い。極性脂質含量はウシに比べてヤクバターの方が多かった。