著者
ハ木橋 勉 松井 哲哉 中谷 友樹 垰田 宏 田中 信行
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.85-94, 2003-08-25
被引用文献数
8

1.ブナ林とミズナラ林の分布の気候条件の関係を定量的に明らかにするために,日本全国の植生と気候値の3次(約1k?)メッシュデータを用いて分類樹による統計解析を行った。2.気候値には,それぞれの分布域の温度(暖かさの指数と最寒月最低気温)と降水量(暖候期降水量と寒候期降水量)を用いた。3.その結果,上記の気候値によってブナ林とミズナラ林の分布が約9割の確立で分類された。4.ブナ林は多雪地域に多く,最寒月最低気温が-12.45℃未満の冬の寒さの強い地域,暖候期降水量760.5mm未満の成長期の降水量の少ない地域,暖かさの指数73.95以上または,寒候期降水量が441.5mm未満n積雪が少ないと考えられる地域で分布が制限されていると考えられた。5.分類のための気候要因は,地域によって異なっており,従来から指摘されていた低温にかかわる要因,夏季の湿潤さ,積雪の寡多がかかわっていることを裏付けた。全国的には,これらが複合的に作用して分布が決定していることが明らかになった。