著者
中谷 友樹
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.254-273, 1994-06-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
90
被引用文献数
1 1

A mathematical model is built for influenza or other similar disease epidemics in a multi-region setting. The model is an extended type of chain-binomial model applied to a large population (Cliff et al., 1981), taking into account interregional infection by interregional contacts of people. If the magnitude of the contact is presented by simple distance-decay spatial interaction or the most primitive gravity model, a conventional gravity-type epidemic model (Murray and Cliff, 1977; Thomas, 1988) is deduced.Given the number of infectives and susceptibles, the chain-binomial model predicts the number of infectives in the next period with binomial probability distribution. Available data are, however, weekly cases per reporting clinic in each prefecture reported by the surveillance project, characterized by continuous variation; the data could be a surrogate index for rates of infection. The author modified the model to use rates of infectives and susceptibles, and used a normal approximation of binomial distribution. With the maximum-likelihood method, this model can be calibrated. The specification of the model is as follows:Li(Yi, t=0, …, Yi, t=T|β°i, δi)=Πt1/√2πVar[Yi, t+1]·exp{-1/2Var[Yi, t+1](Yi, t+1-E[Yi, t+1])}, E[Yi, t+1]=β°i/MiXi, tΣjmijYj, t, Var[Yi, t+1]=β°i/MiXi, tΣjmijYj, t(1-β°i/MiΣjmijYj, t), Xi, t=δi-Σis=0Yi, s, where Mi=Σjmij; Li denotes the likelihood of the model for region i; Xi, t denotes the estimated rate of susceptibles in region i at week t; Yi, t denotes the reported rate of infectives in region i at time t; mij denotes the size of interregional contact with the people in regions j for the people in region i; β°i denotes the infection parameter in region i; δi denotes the parameter concerned with the rate of initial susceptibles in region i.The model posits that the average number of people who come into contact with a susceptible in prefecture i is a constant, and that the average rate of infectives of the people is ΣjmijYj, t/Mi. The probability of a susceptible in region i infected at time t is, therefore, β°iΣjmijYj, t/Mi.This model was applied to a weekly incidence of influenza in each prefecture, from the 41st week, 1988, to the 15th week, 1989, Japan, letting the size of interregional passenger flow Tij correspond to mij as follows: mij=Tij+Tji (i≠j), mii=Tii.Goodness-of-fits (Table 1) of one-week-ahead forecasts were almost satisfactory except for prefectures whose epidemic curves were bi-modal (e.g., Hokkaido) or whose transition speed between epidemic breakout and peak was too high (e.g., Yamagata). The latter might be explained by a cluster of group infection (e.g., school classes) in an earlier phase of the epidemic (see Fig. 4).
著者
花岡 和聖 中谷 友樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2011年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.186, 2011 (Released:2011-05-24)

I はじめに 明治期、ペストやコレラ、マラリア、結核などの伝染病が各地で発生し、様々な防疫対策が取られた。当時、発生状況や患者、感染原因等が詳細に調査され、各地で流行誌としてまとめられた。 ペストに関しては、大阪は、神戸と並び、全国的に最も早い時期にペストの流行が始まる。1909年に発行された『大阪府第二回百斯篤流行誌』によると、大阪では、1899年~1900年及び1905年~1907年にわたりペストが流行した。とりわけ1907年11月には、発生患者数が220名を超えており、それ以前で最も多い約80名の患者が発生した1905年12月と比較しても、1907年11月頃の流行は非常に大規模なものであった。 そこで、本研究の目的は、大阪市を対象にして、『大阪府第二回百斯篤流行誌』から、1906年9月~1907年12月末までのペスト患者の時空間データベースを構築し、当時のペストの地理的分布や拡散過程を明らかにする。地理情報システム(GIS)を用いて、上記の資料を地図化し、改めて分析することで、ペスト流行に関する新たな知見が得られるものと期待できる。こうした研究は、医学地理学だけでなく、情報科学を活用した人文科学研究であるデジタル・ヒューマニティーズ(Digital Humanities)研究としても位置付けられる。 II ペスト患者の時空間データベースの構築 『大阪府第二回百斯篤流行誌』から、大阪市を対象に、「ペスト患者の時空間データベース」の構築を、以下の手順で行った。 まず「「ペスト」患者一覧表」に掲載されるペスト患者の属性をエクセルに入力し、患者属性データを作成する。属性には、ペスト患者の番号や氏名、発病月日、発見理由及月日、病類、住所、発見場所、職業、性別、年齢等の情報が含まれる。 次に、仮製二万分一地形図上に患者の発生地点が記された「大阪市「ペスト」鼠及「ペスト」患者発生図」と、住宅地図上に患者の発生地点と番号が記された詳細図を用いて、発生地点のポイントデータを作成した。具体的には、まずGISを用いて、上記の仮製図を幾何補正し、地図上に記された患者発生地点のポイントデータを入力する。続いて、詳細図に記された発生地点の位置関係をもとに、仮製図上のポイントデータの患者番号を特定した。その上で、患者番号をキーにして、661件の患者属性データとポイントデータを結合した。 最後に、これら以外にも、流行誌に掲載されたペスト鼠数や患者間の同居・交流関係の情報をデータベースとして整備した。 III ペスト患者とペスト鼠数の分布 ペスト患者の時空間データベースを用いて、患者全体のうち、発病と発見が同一場所のペスト患者の発生地点及びペスト鼠数を図に示す。ペスト患者が密集する地域は、主に難波や南堀江、南北に流れる東横堀川の東側である。患者の分布は、感染源となるペスト鼠数の分布はとも一致する。当時、捕獲した鼠の買い取りが行われていたが、1907年、難波警察署管内では年間94,351頭の鼠が検査され、うち1,460頭がペスト菌を有していた(10万頭に対して1547頭)。一方、曽根崎警察署管内では、鼠10万頭に対してペスト鼠は、47頭であった。 IV 患者間の同居・交流関係 特筆すべきは、『大阪府第二回百斯篤流行誌』の「「ペスト」患者同居及交通関係図」には、患者間の同居関係や交流関係が示される点である。この資料をデータベースとして整備し、患者属性データと合わせて利用することで、感染経路を時空間的に追跡が可能となる。これは当時の人的交流の空間範囲を示す資料ともなり得る。 V おわりに 本研究では、『大阪府第二回百斯篤流行誌』を用いて、同資料に掲載される患者属性及び地図上の発生地点から、ペスト患者の時空間データベースを構築した。これを利用することで、患者の発病月日に基づき、発生地点の時空間的変化を把握でき、どのようにペスト拡散し流行したのかを、患者の人口学的、社会経済的属性とも関連付けながら、詳細に分析できる。さらには、患者間の交流関係の情報は、社会ネットワークの観点からの分析や検証も可能である。
著者
埴淵 知哉 中谷 友樹 村中 亮夫 花岡 和聖
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.447-467, 2012-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1 2

社会調査の回収率は,標本から母集団の傾向や地域差を適切に推定するための重要な指標である.本研究では,回収率の地域差とその規定要因を明らかにすることを目的として,全国規模の訪問面接・留置調査を実施しているJGSS(日本版総合的社会調査)の回収状況個票データを分析した.接触成功および協力獲得という二段階のプロセスを区分した分析の結果,接触成功率・協力獲得率には都市化度や地区類型によって大きな地域差がみられた.この地域差は,個人属性や住宅の種類などの交絡因子,さらに調査地点内におけるサンプルの相関を考慮した多変量解析(マルチレベル分析)によっても確認された.したがって,回収状況は個人だけでなく地域特性によっても規定されていることが示された.しかし,接触成功率・協力獲得率には説明されない調査地点間のばらつきが残されており,その理由の一つとして,ローカルな調査環境とでも呼びうる地域固有の文脈的要因の存在も示唆された.
著者
花岡 和聖 中谷 友樹 矢野 桂司 磯田 弦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.227-242, 2009-05-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

本稿では,京町家のモニタリングを意図した外観調査事業から得られる資料に基づき,京都市西陣地区を対象に,京町家の取壊しと建替えを規定する要因を定量的に把握し考察する.その際に,①京町家自体の特性(構造特性と利用状況),②土地利用規制,③近傍の環境特性と関連する指標群を分析した.その結果,①京町家の取壊しは,京町家の建て方や老朽化の程度を示す建物状態,伝統的外観要素の保存状態,高さ規制,周辺環境を表す近傍変数によって規定されていた.また②近傍変数は,土地利用別に異なる空間的な範域を有し,その影響力も土地利用規制と同程度であることがわかった.さらに③京町家からの土地利用転換では,土地利用規制と近傍の環境特性に加えて,従前の京町家自体の特性が土地利用転換を強く規定していた.以上から,京町家の建替えは,時空間的な連鎖を伴って進展していると考察される.
著者
村中 亮夫 中谷 友樹 吉岡 達生
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.87-98, 2007-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
43
被引用文献数
3 1

本稿では, 山口県岩国地域の高校生を対象とし, アレルギー性鼻炎有病率の地域差を, 居住地―通学先関係から分析した. 分析資料としては, 耳鼻科検診時の問診・視診結果を利用した. ロジスティック回帰分析による結果, アレルギー性鼻炎所見の有無に対して, 通学パターン, ぜん息の既往症, 家庭内の受動喫煙が影響を与えていることが明らかになった. アレルギー性鼻炎有病率の地域差については, 高校生の居住地を基準としてはみられなかったが, 高校生の通学先を基準とした場合には, 市部の高校への通学生は郡部の高校への通学生に比べ有病率が有意に高かった. この結果から, 市部の高校への通学生は, 日中の生活時間の多くを費やす高等学校周辺の地域において, アレルギー性鼻炎にかかるリスク要因となる環境に人体が暴露されている可能性が示唆された.
著者
足立 浩基 埴淵 知哉 永田 彰平 天笠 志保 井上 茂 中谷 友樹
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2018, (Released:2021-02-03)

目的:本研究では,iPhoneのヘルスケアアプリのスクリーンショット画像から日常生活上の歩数を得る遡及的調査方法を開発した。インターネット調査を利用し,COVID-19の緊急事態宣言下での歩数変化を例として本調査方法の実用性の検討を本研究の目的とした。 方法:調査会社の登録モニター集団から日本全国に居住する20~69歳のiPhoneの日常的利用者1,200名を抽出し,過去3カ月間のスクリーンショット画像を回収した。画像解析により歩数を読み取るツールを開発し,2020年2月中旬から5月中旬までの平均歩数の推移のデータを取得した。固定効果モデルを用いて緊急事態宣言前後の歩数変化を地域別・性・年齢階級別に推定した。 結果:約79.9%の画像が歩数データの計測に利用可能であった。エラーの要因は操作ミスや画像の低解像度化であり,調査事前に対策し得るものであった。分析の結果,1日あたりの平均歩数が緊急事態宣言後に減少していると推定され,首都圏における先行研究と整合する結果を得た。さらに地域および性・年齢階級による違いを観察し,三大都市圏20代の男性は約2,712歩減,女性は約2,663歩減と最も顕著な減少を確認した。 結論:インターネット調査でスクリーンショット画像を回収し,画像から歩数を読み取る方法は,歩数から推測される身体活動の変化を遡及的かつ客観的に把握する有用な方法として期待される。
著者
村中 亮夫 瀬戸 寿一 谷端 郷 中谷 友樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.492-507, 2012-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
26

本稿では,地域の防災・安全情報が記載されたWebマップをベースとした安全安心マップ(Web版安全安心マップ)について,利用者の活用意思とそれを規定する心理的な要因を分析した.分析資料としては,京都府亀岡市篠町のWeb版安全安心マップについて,紙地図ベースの安全安心マップ(紙地図版安全安心マップ)との対比から得られた利用者評価のデータを利用した.分析の結果,Web版安全安心マップでは紙地図版安全安心マップと比較して高い活用意思が表明され,Web版マップを積極的に活用する意義が示された.また,Web版マップを活用する意思の心理的な要因を検討する構造方程式モデリングの結果,Web版マップの利便性やそれを通して得られる地域の危険/安全箇所に関する認識の深まりの度合い,マップに掲載されている情報の充足性が,Web版マップの活用意思に正の影響を与えていることが示された.
著者
米島 万有子 中谷 友樹 安本 晋也 詹 大千
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000217, 2018 (Released:2018-06-27)

1.研究背景と目的 デング熱は,熱帯地域や亜熱帯地域を主な流行地とする代表的な蚊媒介性感染症の一つである.近年,温暖化や急速に進む都市化,グローバル化に伴い国内外の人や物の流れが活発になり,これまでデング熱の流行地ではなかった温帯の地域においても,デング熱の定着が懸念されている.日本では,2013年に訪日観光客のデング熱感染が報じられ,国内感染による流行が警告された(Kobyashi et al. 2014).翌2014年には首都圏を中心に,約70年ぶりの国内感染に基づくデング熱流行が発生した.これを受けて,防疫対策上,デング熱流行のリスクを推定することは,重要な課題となっている. これまでデング熱流行のリスクマップ研究では,様々な方法が提案されているものの,その多くはデング熱流行地を対象としている(Louis et al. 2014).デング熱が継続的に流行していない地域を対象とした近未来的な流行リスクを評価する方法は,気候条件によって媒介蚊の生息可能性のみを評価する方法(Caminade et al. 2012など)と,デング熱の流行がみられる地域の気候データと社会経済指標から流行リスクの統計モデルを作成し,これを非流行地にあてはめて,将来的な流行リスクの地理的分布を評価する方法がある(Bouzid et al. 2014).本研究ではこれらの先行研究を参考に,媒介蚊の生息適地に関する気候条件と,日本に近接する台湾でのデング熱流行から作成される統計モデルに基づいて,日本における現在と将来のデング熱の流行リスク分布を推定した.2.研究方法 本研究では,はじめにデング熱流行地の中でも日本に地理的に近く,生活様式も比較的類似している台湾を対象とし,台湾におけるデング熱流行リスクの高い地域を予測する一般化加法モデル(GAM)を作成した.デング熱患者数のデータは,台湾衛生福利部疾病管制署で公表されている1999年~2015年に発生した郡区別の国内感染した患者数を用いた.Wen et al. (2006)を参考に,患者数のデータからデング熱の年間発生頻度指標(Frequency index(α))を求め,これを被説明変数とした.説明変数には,都市化の指標として人口,人口密度,第一次産業割合を,気候の指標として気温のデータから算出した積算rVc(relative vectorial capacity)値を,媒介蚊の違いを考慮するための指標として,Chang et al.(2007)をもとにネッタイシマカの生息分布の有無を示すダミー変数を設定した.rVcはデング熱ウイルスに感染した蚊が人間の間に感染を広める能力を示す指標である.rVcは月平均気温の関数として求めており,その詳細については,安本・中谷(2017)を参照されたい. 上記の作成したモデル式に,日本国内の人口や気候値をあてはめて,台湾のデング熱流行経験に基づいた日本での流行発生頻度の予測値を求めた.人口および第一次産業割合のデータは2010年の国勢調査のデータを,2050年の人口データは国土数値情報の将来推計人口を用いた.なお,日本のリスクマップ作成では台湾の郡区と平均面積がおおむね一致する2次メッシュ単位で作成した.3.結果 台湾の郡区別にみたデング熱の発生頻度を従属変数としたGAM分析結果,気候指標の積算rVc,都市化の指標の人口密度,第一次産業割合に有意な関係性が認められた. このモデルを用いて,日本の2010年と2050年のデータを用いて,現在と将来のデング熱の流行リスクマップを描いた.現在では,リスクの高い地域は大都市圏の中心部に分布している.しかし,気候変動の影響によってデング熱の流行リスクの高い地域は著しく拡大することが推定された(図1).4.おわりに 本研究は,台湾のデング熱流行経験に基づいて,現在の日本のデング熱の流行リスク分布と気候変動の影響による流行リスク分布の推定を定量的な手法によって行った.2014年の流行発生地は,本研究の結果においてもリスクの高い地域であった.長期的にも気候の温暖化の影響によって,デング熱流行リスクの地理的分布は拡大することが示された.付記:本研究は,JST-RISTEX「感染症対策における数理モデルを活用した政策形成プロセスの実現」(代表:西浦博)において実施した.
著者
秋濃 俊郎 中谷 友樹 豊永 昌彦
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.49-62, 2004-09-30

標準セル方式に基づく大規模集積回路のセル配置処理は、概略配置と詳細配置から構成される。概略配置では、セルの大まかな位置が決められ、詳細配置へ重要な影響を与える。前稿では、シミュレーテッド・アニーリング(SA)法による概略配置のコンピュータ実験により約12,000〜69,000個のセル数を持つ8種のベンチマーク回路を用いて座標精度について詳細に調べ、「約2.5個×平均セル横幅」のスロット幅において総配線長のコスト関数が最小になることを見出した。この結論は、SA法による最適化で、特にセルの初期概略配置(以降、初期配置と言う)で限定されたシミュレーション条件下のものであった。本稿では、約67,000〜69,000個とトップ3となる最大規模のセル数を持つベンチマーク回路に限定し、初期配置、初期温度、温度冷却スケジュール、Metropolis's Monte-Carlo(MMC)法の回数、熱平衡への繰り返し回数など全てのシミュレーション条件を変化させて再度詳細にSA法によるコンピュータ実験を行い、この最適なスロット幅と最終コストがほぼ変わらないことを示した。結果として特に初期温度に関しては、かなり低温からコンピュータ実験を行っても最適な最終解が得られた。また、各ベンチマーク回路で用いられているセル横幅が大きいトップ2から9の平均セル横幅が、コスト改善を妨げる第一要因であると結論付けられる。更に、他のシミュレーション条件の最終解への影響について論ずる。
著者
中谷 友樹 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.506-521, 2008-04-25 (Released:2010-06-02)
参考文献数
37
被引用文献数
3 1

To detect spatio-temporal pattern of crime clusters/hotspots, the possibilities of three-dimensional mapping methodologies for crime event data are explored using two approaches: three dimensional kernel-density mapping using a volume rendering technique and visualisation of cylindrical significant clusters that can be detected by space-time scan statistics. Both approaches are intended to visualise spatio-temporal domains with high densities of crime in a three-dimensional space composed of two geographical dimensions and one time dimension. The proposed three-dimensional mapping methodologies are evaluated through application to a dataset of snatch-and-run offences in Kyoto City during the period 2003-2004. The results are summarized as follows: (a) Three-dimensional crime mapping enables effective visualisation of the geographical extents and duration of crime hotspots simultaneously. This method is particularly useful to identify geographical diffusion and movements of crime clusters/hotspots compared to traditional dynamic analyses of crime mapping using cross-sectional maps with arbitrary time intervals.  (b) In practice, the roles of three-dimensional kernel mapping and space-time scan statistics should be complementary. Space-time scan statistics provide clear-cut domains of crime clusters/hotspots that can be used for secondary analyses, such as evaluation of socio-environmental and temporal characteristics focusing on detected domains. However, we should note that the method assumes cylindrical geometrical-constrains of space-time domains. Three-dimensional kernel density mapping provides fuzzy domains with high densities of crime and a useful basis to assess the validity of the assumption of spatial scan statistics and to investigate detailed space-time sequences of crime clusters/hotspots. (c) Empirical analyses of the snatch-and-run offence dataset in Kyoto City revealed constant clusters/hotspots during the study period in central Kyoto and around Kyoto Station as well as transient clusters/hotspots around several railway stations in the suburbs. Temporal differences of transient clusters show geographical movements of hotspots from the north to the south via the west. We also identified that outbreaks of snatch-and-run offences alternated between a pair of cluster areas. These results suggesting so-called displacement phenomena indicate the need to monitor crime events and effects of crime-preventive actions in a widespread space-time context.
著者
矢野 桂司 磯田 弦 中谷 友樹 河角 龍典 松岡 恵悟 高瀬 裕 河原 大 河原 典史 井上 学 塚本 章宏 桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.12-21, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
30
被引用文献数
9

本研究では,地理情報システム(GIS)とバーチャル・リアリティ(VR)技術を駆使して,仮想的に時・空間上での移動を可能とする,歴史都市京都の4D-GIS「京都バーチャル時・空間」を構築する.この京都バーチャル時・空間は,京都特有の高度で繊細な芸術・文化表現を世界に向けて公開・発信するための基盤として,京都をめぐるデジタル・アーカイブ化された多様なコンテンツを時間・空間的に位置づけるものである.京都の景観要素を構成する様々な事物をデータベース化し,それらの位置を2D-GIS上で精確に特定した上で,3D-GIS/VRによって景観要素の3次元的モデル化および視覚化を行う.複数の時間断面ごとのGISデータベース作成を通して,最終的に4D-GISとしての「京都バーチャル時・空間」が形作られる.さらにその成果は,3Dモデルを扱う新しいWebGISの技術を用いて,インターネットを介し公開される.
著者
矢野 桂司 中谷 友樹 磯田 弦 高瀬 裕 河角 龍典 松岡 恵悟 瀬戸 寿一 河原 大 塚本 章宏 井上 学 桐村 喬
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.464-478, 2008-04-25
被引用文献数
2 16

バーチャル京都は,歴史都市京都の過去,現在,未来を探求することを目的に,コンピュータ上に構築されたバーチャル時・空間である。本研究では,最先端のGISとVR技術を用いて,複数の時間スライスの3次元GISからなる4次元GISとしてのバーチャル京都を構築する。本研究は,まず,現在の京都の都市景観を構築し,過去にさかのぼる形で,昭和期,明治・大正期,江戸期,そして,京都に都ができた平安期までの都市景観を復原する。<br> バーチャル京都を構築するためには以下のようなプロジェクトが行われた。a)京都にかかわる,現在のデジタル地図,旧版地形図,地籍図,空中写真,絵図,景観写真,絵画,考古学資料,歴史資料など位置参照可能な史・資料のGIS データの作成,b)京町家,近代建築,文化遺産を含む社寺など,現存するすべての建築物のデータベースおよびGISデータの作成,c)上記建築物の3次元VRモデルの構築,d)上記GISデータを用いた対象期間を通しての土地利用や都市景観の復原やシミュレーション。<br> バーチャル京都は,京都に関連する様々なデジタル・アーカイブされたデータを配置したり,京都の繊細で洗練された文化・芸術を世界に発信したりするためのインフラストラクチャーである。そして,Webでのバーチャル京都は,歴史的な景観をもつ京都の地理学的文脈の中で,文化・芸術の歴史的データを探求するためのインターフェイスを提供する。さらに,バーチャル京都は,京都の景観計画を支援し,インターネットを介して世界に向けての京都の豊富な情報を配信するといった重要な役割を担うことになる。
著者
桝本 妙子 山田 陽介 山田 実 中谷 友樹 三宅 基子 渡邊 裕也 吉田 司 横山 慶一 山縣 恵美 伊達 平和 南里 妃名子 小松 光代 吉中 康子 藤原 佳典 岡山 寧子 木村 みさか
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.390-401, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
43
被引用文献数
6

目的 地域在住自立高齢者の転倒リスクとその関連要因および性差を検討した。方法 京都府亀岡市の65歳以上の全高齢者の中で要介護 3 以上を除く18,231人に対して2011年 7~8 月に行った自記式留め置き式質問紙調査への回答者13,159人のうち(回収率72.2%),要支援・要介護認定者を除く「自立高齢者」12,054人について分析した。調査票は個別に配布し郵送で回収した。調査内容には,基本属性,鳥羽らによる転倒リスク簡易評価指標 5 項目,日常生活圏域ニーズ調査基本チェックリスト25項目,老研式活動能力指標13項目を用い,高齢者の諸機能や生活機能の低下の有無を示す 9 つの指標(①運動機能,②低栄養,③口腔機能,④閉じこもり,⑤物忘れ,⑥うつ傾向,⑦ IADL,⑧知的能動性,⑨社会的役割)で調査した。分析は,性,年齢別の転倒リスクとその関連要因および性差をカイ二乗検定とロジスティック回帰分析により把握し,9 つの評価指標を独立変数,年齢と教育年数を共変量,転倒リスクを従属変数とするロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行って各要因による転倒リスクへの独立した影響を性別ごとに分析した。結果 本調査回答者の過去 1 年間の転倒率は20.8%で,転倒リスク高群は26.6%であった。転倒リスクは,男女とも加齢とともに高くなり,女性はすべての年齢層において男性よりも高かった。また,男女とも,すべての評価指標と転倒リスクとの関連がみられ,それぞれの要因を調整した結果では,男性は運動機能,低栄養,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に,女性は運動機能,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に有意な関連がみられ,運動機能低下は男女とも最も強い要因であった。性差では,低栄養,口腔機能は男性の方に,IADL,知的能動性は女性の方に転倒リスクとの関連が強かった。結論 地域在住自立高齢者の 5 人に 1 人は過去 1 年間に転倒を経験し,4 人に 1 人は転倒リスクを有していた。転倒リスクと 9 つすべての評価指標との間に有意な関連がみられ,とくに男女とも運動機能低下が最も大きかった。また,転倒リスクに影響する要因に性差がみられ,性別を考慮した支援策が必要と示唆された。
著者
埴淵 知哉 中谷 友樹 竹上 未紗
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.591-606, 2015-11-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
51

健康を左右する一つの因子として,近隣環境への研究関心が高まっている.しかし,これまで日本を対象とした事例研究の蓄積は不十分であり,国際的にも全国的範囲を対象とした分析は限られていた.本研究では,人々が暮らす場所の近隣環境によって,健康に由来する生活の質(HRQOL)が異なるのかどうかを統計的に分析した.認知的および客観的に測定された近隣環境指標と,HRQOLの包括的尺度(SF-12)との関連性を,日本版総合的社会調査2010年版を用いたマルチレベル分析によって検討した.分析の結果,近隣環境を肯定的に評価・認知している人ほど,健康に由来する生活の質が高いという関係が明らかになった.他方で,客観的に測定された近隣環境指標はHRQOLとの独立した関連を示さず,場所と健康の間を取り結ぶ多様な作用経路が示唆された.
著者
米島 万有子 中谷 友樹 渡辺 護 二瓶 直子 津田 良夫 小林 睦生
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.138-158, 2015-03-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
60

本研究では,琵琶湖東沿岸地域を対象に,国内の代表的な2種類の疾病媒介蚊(成虫)の捕集調査を実施した.そこで観測された捕集個体数の空間的変動を,偏相関最小二乗法(PLS)回帰分析に基づき調査定点周辺の土地被覆の構成(種目別面積比)と関連づけて検討した.また,得られたPLS回帰モデルを利用して,当該媒介蚊の生息分布を面的に推定した.その結果,コガタアカイエカの捕集個体数は,主に水田によって土地被覆が構成されるような農村景観の卓越する地域で多く,平野部に好適な生息場所が多く認められた.シナハマダラカ群の捕集個体数は,水域とそれに付随するヨシなどの植生から構成されるような湿地景観の卓越する地域で多く,水域周辺に好適な生息場所が存在することが判明した.こうした媒介蚊の捕集データから推定した生息分布域は,媒介蚊による吸血被害を生むリスクの分布を示すものであり,蚊媒介性感染症の流行対策に有用な地理情報と考えられる.
著者
永田 彰平 中谷 友樹 矢野 桂司 秋山 祐樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

1.背景と目的<br> 健康的な生活を支える食料品へのアクセスが剥奪される地域的状況はフードデザートと呼ばれ、特定の社会集団の健康水準を低下させる要因として指摘されてきた。日本社会では、中心商業地の衰退に伴う店舗の閉鎖や都市的な環境で広がる社会的疎外が、高齢者を中心とする徒歩によって生鮮食料品を購買していた居住者に深刻な影響をもたらすと危惧されている(岩間, 2011)。2011年3月に発生した東日本大震災では、津波被災地区を中心に発生した被災による食料品購買機会の喪失が問題となっている(岩間ほか, 2012)。<br> フードアクセスをめぐる課題を受け、近年では生鮮食料品を販売する店舗へのアクセスを評価する地図成果物が公開されるようになった。例えば、農林水産研究所が公開している食料品アクセスマップでは、500mと定義された徒歩圏内にスーパー等の食料品購買機会を得られない地区が示されている(薬師寺・高橋, 2012)。ただし、徒歩圏内に購買機会のない環境が長期的に維持されている場合には、その環境に適応した食料品の確保(例えば、自動車による購買行動)がなされているとも考えられる。そのため、本研究では徒歩での購買行動が可能であった地区において購買機会が失われた状況が、フードアクセスの問題を最も深刻に被る地区と想定した。<br> また、フードデザート問題は、欧米社会にみられる大都市部の貧困地区の健康問題から提起されてきた論点ではあるが(中谷, 2010)、こうした問題発生地区の社会的位置付けを、日本全体を対象として俯瞰する試みはなされてこなかった。これを踏まえて、本研究では近年の生鮮食料品販売店舗の閉鎖に伴って生じた、徒歩でのフードアクセスの喪失地区を特定し、当該地区を社会地区類型(ジオデモグラフィクス)を利用して評価することを試みる(中谷・矢野, 2014)。対象期間は、震災発生前の2010年からその3年後の2013年とした。<br><br>2.資料と方法<br>(1) 座標付き電話帳データベースであるテレポイントPack!(全国版)の2011年2月(2010年10月発行の電話帳と対応)と2014年2月版(2013年10月発行の電話帳と対応)を用いて、生鮮食料品購入可能店舗の抽出を行った。業種はスーパー(生協等店舗を含む)、その他の食料品店(コンビニ、個人商店等)に区別し、店舗名等から実質的な小売店舗であるものに限定した。<br> (2) GIS環境において直線距離500m圏を徒歩圏として、時期別に徒歩圏での食料品アクセス可能範囲を特定するレイヤを生成した。また、両レイヤのオーバーレイによって、食料品店舗への徒歩アクセスの変化を識別した。さらに、各圏域に含まれる人口を基本単位区の人口統計(2010年)を平滑化して推計した。<br> (3) 食料品アクセスの衰退地区に居住する人口を、町丁字等単位の社会地区類型別に比較した。社会地区類型にはMosaic Japan 2010年版(エクスペリアンジャパン(株))を利用した。<br><br>3.徒歩フードアクセスの喪失マップと地区類型<br>徒歩によるフードアクセスが近年失われた地区の全国分布図を作成し、当該地区の地域別・社会地区類型別の特徴を、業種別に検討した。抽出された食料品購入可能店舗の総数は減少しており、とくに津波被災地区ではスーパー以外の店舗の減少が著しい。<br>地区類型別の整理の一例として下図に、2010年において徒歩圏内にスーパーのある地区に居住していた人口の内、2013年にスーパーへの徒歩アクセスを失った割合(%)を、Mosaic Group別に示す(人口密度が低いグループほど上に配置してある)。徒歩によるフードアクセスの喪失は、地区の社会的属性に応じても特徴的に異なることがわかる。<br><br>本研究は,厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究「日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究」(研究代表者:村山伸子)および科学研究補助金・基盤研究(B)「GISベースの日本版センサス地理学の確立とその応用に関する研究」による成果の一部である.
著者
神田 兵庫 磯田 弦 中谷 友樹
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.91-106, 2020

<p> 本稿では,1980年から2015年における市町村別人口および1kmメッシュ人口から,日本の大都市雇用圏がこれまでに経験した都市構造の変遷を把握した。その結果,日本の都市圏の多くは,クラッセンの都市サイクルモデルの想定とは異なり,いわゆる人口が増加した都市化や郊外化の段階を経験した後,都市圏全体として人口が減少する局面を迎えると,中心部の人口の割合が相対的に上昇する集中化(中心化)傾向を示すことが明らかとなった。また,人口減少局面においては,都市構造の遷移は小規模な都市圏の傾向を中規模以上の都市圏が追随する傾向にある。</p>
著者
八木橋 勉 渡久山 尚子 石原 鈴也 宮本 麻子 関 伸一 齋藤 和彦 中谷 友樹 小高 信彦 久高 将洋 久高 奈津子 大城 勝吉 中田 勝士 高嶋 敦史 東 竜一郎 城間 篤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ヤンバルクイナは沖縄島北部のやんばる地域のみに分布しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に分類されている。森林面積や外来種とヤンバルクイナの繁殖分布の関係を明らかにするため、沖縄島北部でプレイバック法による調査を2007年から2016年の繁殖期に3年ごとに4回実施し、確認個体数を応答変数とするGAMMによる統計解析を行った。その結果、ヤンバルクイナは、マングースが少ない場所ほど多い、広葉樹林面積が大きい場所ほど多い、畑地草地面積が大きい場所ほど多い、2007年と比較して近年確認個体数が増加している、という統計的に有意な関係がみられた。また、確認地点数も増加していた。これらの結果から、地上性のヤンバルクイナは、外来種であるマングースの影響を強く受けているが、マングース防除事業の効果により、近年分布が回復していると考えられた。ヤンバルクイナは広葉樹林面積が大きい場所で多いことから、近年大面積伐採が減少していることも分布回復に有利に働いていると考えられた。同時に畑地草地面積が大きい場所で多いことから、林内だけでなく、林冠ギャップ、林縁や草地なども生息環境として重要である可能性が考えられた。</p>