著者
垰田 宏
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.259, pp.34-70, 2001 (Released:2011-03-05)
著者
伊藤 江利子 吉永 秀一郎 大貫 靖浩 志知 幸治 松本 陽介 垰田 宏
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.37-43, 2002-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1

関東平野におけるスギ林衰退の原因を解明するため,34地点の固定調査地でスギ林衰退度と土壌条件(母材,堆積様式,土性,表層0-8cm・次表層8-16cmの容積重,表層土壌孔隙率,有効土層深)との関係を検討した。衰退度は砂土が卓越する低地で高く,火山灰や堆積岩を母材とする埴壌土が卓越する台地および丘陵地で低い。容積重および孔隙率は衰退度と相関が認められ,表層土壌の物理的特性がスギ林衰退に影響を与えていた。また,表層土壌の堅密化の影響が有効土層深の深さによって緩和されることが示唆された。これらの検討の結果,強度のスギ林衰退は,土層厚が浅く,堅密な土壌で発生していることが明らかにされた。また,寺社境内では踏圧のため,表層が局所的に堅密化しており,そのような場所では極度の衰退が単木的に認められた。人為による土壌の物理性の悪化が,スギ衰退を助長していると考えられた。
著者
松本 陽介 小池 信哉 河原崎 里子 上村 章 原山 尚徳 伊藤 江利子 吉永 秀一郎 大貫 靖浩 志知 幸治 奥田 史郎 石田 厚 垰田 宏
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.53-62, 2002-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
29
被引用文献数
1

関東地方の丘陵部を含む平野部全域を対象として,スギなどの樹木について衰退の現況を,目視による樹木衰退度判定法によって調査した。その結果,スギの衰退が最も顕著であり,ヒノキなどの常緑針葉樹類,イチョウ,ケヤキなどにも衰退が認められた。いっぽう,メタセコイアおよびヒマラヤスギでは衰退個体がほとんど見いだせなかった。スギの衰退は,関東平野のほぼ全域で認められ,関東平野の北西部に位置する前橋市周辺や熊谷市周辺,および久喜市周辺,これらに隣接する群馬県下および埼玉県下の利根川沿いの地域で特に著しかった。次いで,水戸市北方の那珂川や久慈川沿いの地域,および銚子市周辺の太平洋に面した地域で衰退度が高く,千葉市周辺および町田市周辺でも比較的衰退度が高かった。
著者
垰田 宏
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
日本蘚苔類学会会報 (ISSN:02850869)
巻号頁・発行日
vol.6, no.12, pp.237-243, 1996-11-27

樹皮上に生育する蘚苔類や地衣類が大気の汚染に弱く,生物指標として優れていることはよく知られ,クチクラ層を持たない細胞が裸出し,夜露・霧・雨滴などに依存した生活をしているためとされている.このような植物体の構造と生態的特徴は多くの種類に共通であるが,大気汚染感受性は種類によって大きく異なる.二酸化硫黄等の有害ガスを用いた耐性の比較実験では,汚染地での分布に対応した耐性が確かめられている.近年では,いわゆる「酸性雨」による植物被害の存在が問題とされているが,高等植物の葉に比べて,酸性物質の侵入に対する防御組織を持たない蘚苔類の反応はより敏感であるはずである.すでに,いくつかの蘚苔類や地衣類に対する人工酸性雨の負荷試験が行われているが,蘚苔類の分布の違いを酸性雨耐性の差によって説明することはできていない.本研究はいくつかの蘚苔類について,人工酸性雨による酸性環境下での生育障害を調査し,野外における分布特性との関係を考察した.実験に用いた材料は,市街地の周辺の樹皮上に生育する着生蘚苔類のほか,山地の岩上,地上に生育しているものを加えた.一般に,森林内に生育する蘚苔類が大気汚染の影響を受けることは少なく,むしろ,岩の種類や土壌の酸性度など,生育基物の影響が大きいとされている.着生蘚苔類については,既存の報告で大気汚染に対する耐性の違いが明らかにされている種類を用いた.人工酸性雨としては,硫酸,硝酸,亜硫酸,硫酸・塩酸・硝酸の混合液(当量比2:2:1),及び,それらと栄養塩類の混合液を使用した.硫酸を含む酸の散布後にシュートを乾燥させた場合には,低濃度でも被害が生じたが,処理条件を一定にすることが困難なため,耐性の比較は飽和状態で行った.また,新鮮な亜硫酸溶液の還元性の加害作用を除き,湿潤環境下では酸の種類による被害の差は少なかったことから,成分が現実の降雨に近似の混合液で耐性の比較を行った.高濃度の酸で処理した蘚苔類の細胞は原形質分離を生じ,約1日後にはクロロシスが観察される.生存した組織があれば,新しいシュートの伸長が見られる.細胞が枯死せず,かつ,有害な濃度であれば,シュートの伸長が抑制される.これは,比較的大気汚染に弱い種であるヒロハツヤゴケ(Entodon challengeri)などの新シュートの成長で確かめられた.同様の傾向は市街地のアルカリ土壌を好むホソウリゴケ(Brachymenium exile)の仮根の伸長量にも見られた.これらの種類にとっては酸性環境が成長阻害の原因となっていると考えられる.くり返し行った実験の結果から,致死的であった最低濃度,または,生存してシュートの伸長が見られた最高濃度を絶対的な酸性雨耐性とすると,大気汚染地域に深く侵入する種類,針葉樹を好む種類は広葉樹上だけに生育する種類に比べて耐性がやや大である.しかし,弱い種類であっても致死的濃度は当量濃度で1.0 meq/l(pHで3.0)以上であり,実際に工業地帯の着生砂漠地域で採取された酸性の雨水(pH 4.2, EC 60μS/cm)で生育が阻害されることはなかった.山地に生育する種類の耐酸性は生育基物の化学的性質との関係が深く,花崗岩上,高層湿原,針葉樹林の林床に生育する種類は耐酸性が大きい傾向がある.
著者
ハ木橋 勉 松井 哲哉 中谷 友樹 垰田 宏 田中 信行
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.85-94, 2003-08-25
被引用文献数
8

1.ブナ林とミズナラ林の分布の気候条件の関係を定量的に明らかにするために,日本全国の植生と気候値の3次(約1k?)メッシュデータを用いて分類樹による統計解析を行った。2.気候値には,それぞれの分布域の温度(暖かさの指数と最寒月最低気温)と降水量(暖候期降水量と寒候期降水量)を用いた。3.その結果,上記の気候値によってブナ林とミズナラ林の分布が約9割の確立で分類された。4.ブナ林は多雪地域に多く,最寒月最低気温が-12.45℃未満の冬の寒さの強い地域,暖候期降水量760.5mm未満の成長期の降水量の少ない地域,暖かさの指数73.95以上または,寒候期降水量が441.5mm未満n積雪が少ないと考えられる地域で分布が制限されていると考えられた。5.分類のための気候要因は,地域によって異なっており,従来から指摘されていた低温にかかわる要因,夏季の湿潤さ,積雪の寡多がかかわっていることを裏付けた。全国的には,これらが複合的に作用して分布が決定していることが明らかになった。