著者
南雲 直子 大原 美保 バドリ バクタ シュレスタ 澤野 久弥
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.361-374, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
22
被引用文献数
2

洪水常襲地帯であるフィリピン共和国パンパンガ川下流域のブラカン州カルンピット市をモデル地域に,降雨流出氾濫モデルによる洪水氾濫解析とGISマッピングを実施し,地域の住民避難や時系列の洪水災害対応計画に役立つリソースマップ,浸水想定マップ,浸水確率マップ,浸水チャートを作成した.こうした資料の作成には,高解像度数値標高モデルをはじめとする地理空間情報と洪水記録の蓄積が必須である.また,地域の浸水危険性の把握には洪水氾濫解析結果だけでなく,地理学的視点からの土地の成り立ちへの理解も重要で,同時に住民が自ら考え行動できるよう継続的な支援を行っていくことが洪水被害の軽減に役立つ.
著者
南雲 直子 バドリ バクタ シュレスタ 大原 美保 澤野 久弥
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

フィリピン共和国ルソン島中部のパンパンガ川流域は、 2015年10月中旬に襲来した台風24号及び12月中旬の台風27号により流域の広い範囲が浸水した。台風27号による降水量は台風24号のものよりも多かったが、観測された河川水位・浸水深、人的・建物被害は台風24号の方が大きかった。また、両台風による降水量・洪水規模は、過去30年間で最大とされる、2011年台風17号を超えることはなかった。フィリピンではNDRRMC(National Disaster Risk Reduction and Management Councilを中心に広域行政区、州、市、バランガイにそれぞれDRRMCが設置され、防災体制は他の東南アジア諸国と比べ進んでいる。しかし、洪水が頻繁に発生し、ある程度の時間差で上流から下流へと洪水が波及するパンパンガ川流域では、ハザードマップ作成やリスク評価とともに、地域レベルでのタイムライン策定など、より良い復興のための対策を今後も充実させていくことが必要であろう。