著者
フィットレル アーロン
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
no.60, pp.9-38, 2020-03-31

本稿では、二重文脈歌の翻訳方法について検討し、翻訳の改善に向けて、翻訳方法を提案してみた。古典文学、特に和歌を外国語に翻訳する際、掛詞という、日本語の語彙と構造と深く関わる修辞法を目標言語にも伝えるのは極めて難しいことである。掛詞の一方である景物ともう一方である人事との間に、音声以外の共通点が見出しがたい場合、目標言語への翻訳または反映がさらに困難で、先行翻訳において様々な工夫がなされてきてはいるものの、問題が解決されているとは言い難い。そもそも、掛詞は種類も、一首の和歌の中での数も多く、縁語とともに出てくる例も多い。また、景物と人事の関係もさまざまであり、ときには音の繫がり以外の関連が見つけにくい例もあるが、景物と人事の性質が類似する例も多い。稿者は和歌のハンガリー語訳も行っているため、本稿ではハンガリー語訳を中心に、翻訳または反映が最も困難であると考えられる、多くの掛詞と縁語を使用した二重文脈歌の西洋の言語への翻訳方法について考察した。最初に、掛詞の本質について、同音異義の修辞法に関する主な先行研究を参考にして確認した。次に、外国語訳が複数ある『古今和歌集』と『新古今和歌集』、『百人一首』の二重文脈歌を中心に、英訳と独訳の先行例をとおして、二重文脈歌の現在までの翻訳方法を検討し、11 の翻訳方法を識別し、例をあげて分析し、その問題点を示した。最後に、掛詞の本質をより正確に伝達する翻訳方法を提案し、翻訳実践を行った。上記の検討と合わせて、二重文脈歌の特質を最も正確に伝える翻訳方法は、景物の文脈を表面に出し、人事の文脈を潜在化して、言葉の選択または擬人法によって暗示する、寓喩的な方法であると結論付けた。
著者
フィットレル アーロン
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.9-38, 2020-03-31

本稿では、二重文脈歌の翻訳方法について検討し、翻訳の改善に向けて、翻訳方法を提案してみた。
著者
フィットレル アーロン
雑誌
人文
巻号頁・発行日
no.16, pp.276-241, 2018-03

本稿では、同音反復で心情部と連結する序詞の翻訳について考察し、『古今集』、『新古今集』、『百人一首』のこの修辞法を使用している和歌、合計四十七首を検討する。最初に、序詞の本質と機能について確認し、同音反復式の序詞と心情部との関係は基本的に同音によるとはいえ、心情の背景を作ってそれと内容的にもつながると述べる。これを証明するため、考察の対象となった序歌の序詞に見られる歌語の同時代の用例を検討し、それぞれの歌語のイメージと詠まれ方を押さえて、各歌での心情部との関わりについて確認する。次いで、検討の対象とした和歌の英訳と独訳を分析し、翻訳方法を十四種に分けたうえで、それぞれを紹介し、問題点を提示した。次に、西洋詩で日本古典和歌の序詞と類似する修辞法を探求し、そこで、心情の表明を自然描写で導入するような構成を持つ詩に注目した。最後に翻訳案を提示して、数首の和歌の試訳(ハンガリー語)を行った。以上の多方面からの検討を踏まえ、同音反復式の序詞を持つ歌の翻訳方法として、序詞と心情部の順番を保持しつつ、文法的につなげないこと、また同音反復は同音を持つ語の近接、または同語の反復によって反映させることを提案した。In this treatise, we consider translations of waka prefaces (a rhetoric of waka poetry) that are connected to the meaning of the whole poem and feature sound repetition, from 47 selected waka poems. These examples have been pooled from Kokin Wakashū, Shin-Kokin Wakashū and Hyakunin Isshu. At first, we seek to determine the essence and function of the waka preface and point out that, though the landscape depicted in these prefaces connects with the meaning implied by the sound repetition, it also helps to establish the background for the meaning of the poem. To demonstrate this, we examine the expressions in other contemporaneous poems to grasp the imagery that was commonly relied upon. Next, we analyze English and German translations of the 47 poems and divide the methods of their translation into 14 groups; we introduce the 14 methods and point out their issues. Subsequently, we seek some rhetorical devices in Western poetry which can be considered similar to the prefaces in waka poetry, and pay attention to the poems which have an introduction featuring a landscape or other natural features to create a background to express the poet's intention. At last, we suggest a possible method of translation and provide some examples (translation into Hungarian). We propose, as a translation method of the waka poems with preface connecting to the meaning of the poem with sound repe tition, to keep the word order of the preface in an attempt to match the meaning in the poem, and we argue against introducing conjunctions. Likewise, the sound repetition could be reproduced by selecting similarly sounding words or by word repetition in close proximity.