著者
小林 盾 ホメリヒ カローラ
出版者
成蹊大学文学部学会
雑誌
成蹊大学文学部紀要 (ISSN:05867797)
巻号頁・発行日
no.49, pp.229-237, 2014-03

この論文では、生活満足度が主観的幸福感と一致しているのかを検討する。ともすれば、生活に満足している人は、幸福であるとみなされがちである。しかし、このことは自明ではない。満足していても不幸とかんじるかもしれないし、不満があっても幸福かもしれない。そこで、2013年社会と暮らしに関する意識調査(SSP-W2013-2nd)をデータとしてもちいて、分析をおこなった。その結果、以下がわかった。(1)満足と幸福が一致しない人は、全体で23.4%いた。そのうち「生活に不満があるのに幸福」というポジティブな不一致の人は、不満な人のうち3割いた。とくに60代で45.9%と多かった。逆に「満足しながら不幸」というネガティブな不一致は、1.5 割いた。とくに未婚者で27.9%と多かった。(2)女性ほど、年配者ほど、既婚者ほど、世帯収入が多いほど、「不満だが幸福」というポジティブな不一致がふえ、「満足だが不幸」というネガティブな不一致がへった。ただし、学歴や従業上の地位による違いはほとんどなかった。以上から、生活満足度と主観的幸福感はたしかに似た概念であるが、同一視するには慎重であるべきだろう。