著者
一瀬 敏弘
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.109-124, 2014

<p>本稿では,地方採用警察官の技能形成促進策を明らかにするため,政令指定都市を擁する1万人以上の大規模警察本部の人事データに基づき,その昇進構造を検証することを目的とした。人事データと警察官僚の聞きとり調査による実証分析で得られた知見は,次のとおりである。まず,地方採用警察官が昇進可能な最高階級である警視長(部長職)への昇進には,fast track効果がみられ,早く昇進した者ほど国家公務員(地方警務官:警視長・警視正)へ転身する傾向がみられた。そして,少し遅れて昇進したグループには,警視(警察署長)や警部(警察署課長)への昇進可能性が提示される一方で,その他多くの警察官には,警部補(係長)への昇進可能性が提示される。これらの結果からは,全ての警察官に技能形成へのインセンティブを付与するような人事政策が展開されているとも解釈できる。つまり,自治体警察の昇進構造は,全てのノンキャリア警察官の努力を引き出すよう設計され,その人的リソースを最大動員するための選抜システムが内在されているとも言えるだろう。</p>
著者
一瀬 敏弘
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.109-124, 2014-12-20 (Released:2019-06-08)
参考文献数
34

本稿では,地方採用警察官の技能形成促進策を明らかにするため,政令指定都市を擁する1万人以上の大規模警察本部の人事データに基づき,その昇進構造を検証することを目的とした。人事データと警察官僚の聞きとり調査による実証分析で得られた知見は,次のとおりである。まず,地方採用警察官が昇進可能な最高階級である警視長(部長職)への昇進には,fast track効果がみられ,早く昇進した者ほど国家公務員(地方警務官:警視長・警視正)へ転身する傾向がみられた。そして,少し遅れて昇進したグループには,警視(警察署長)や警部(警察署課長)への昇進可能性が提示される一方で,その他多くの警察官には,警部補(係長)への昇進可能性が提示される。これらの結果からは,全ての警察官に技能形成へのインセンティブを付与するような人事政策が展開されているとも解釈できる。つまり,自治体警察の昇進構造は,全てのノンキャリア警察官の努力を引き出すよう設計され,その人的リソースを最大動員するための選抜システムが内在されているとも言えるだろう。
著者
一瀬 敏弘
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.57-72, 2017

<p> 本稿では,警察庁が自治体警察と分業することで生じる情報の非対称性問題をインセンティブの観点から考察した.分析の結果,警察官僚が自治体警察の最高幹部に就任することで,自治体警察内の人事権を掌握し,人事情報の非対称性問題を緩和する.その一方で,警察庁は,自治体警察で早く昇進した者に人事業務の責任を負わせ,その代わりに将来の昇進可能性をインセンティブにすることを通じて,間接的に自治体警察を管理統制するシステムを構築していた.</p>
著者
一瀬 敏弘
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.57-72, 2017-03-20 (Released:2017-09-11)
参考文献数
47

本稿では,警察庁が自治体警察と分業することで生じる情報の非対称性問題をインセンティブの観点から考察した.分析の結果,警察官僚が自治体警察の最高幹部に就任することで,自治体警察内の人事権を掌握し,人事情報の非対称性問題を緩和する.その一方で,警察庁は,自治体警察で早く昇進した者に人事業務の責任を負わせ,その代わりに将来の昇進可能性をインセンティブにすることを通じて,間接的に自治体警察を管理統制するシステムを構築していた.