著者
佐藤 忠彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.4-20, 2022-03-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
12

本稿は,計量経営学の進展を狙いとし,その要素技術になるデータサイエンスの基本事項を紹介することを目的とする.本稿では,まずデータサイエンスの入力となる「データ」の特性を述べ,「モデル化に対する基本姿勢」を紹介したうえで,主要なツールとなる「統計モデル」と「機械学習モデル」の概要を説明する.また,経営学でも有効活用しうる「ベイズモデル(統計モデルの一種)」の解析例も併せて紹介する.
著者
安藤 史江 杉原 浩志
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.5-20, 2011-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本稿では,半ばブラック・ボックス化しているトップ主導の組織アンラーニング実現のメカニズムを,社会福祉法人X会の詳細な事例分析を通じて考察した.その結果,X会の組織アンラーニングは,棄却対象の点でも棄却を行った当事者の点でも,段階的に進行したと解釈された.この段階性は,直接の上位層の棄却レベルが下位層のそれを下回るという形で存在するギャップに組織成員が何度も直面し,その都度それを解消することで生じていた.
著者
奥山 敏雄
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.4-13, 1999 (Released:2022-07-27)
被引用文献数
1

成立期の社会学は,各機能領域に分化した全体としての近代社会をどのように理解するかというプロブレマティークの中で組織を理解しようとした.機械,有機体,生命システムという,組織の社会学理論の基礎メタファーは,このプロブレマティークの変容に連動するものと解釈できる.組織理論のメタファー論は理論多元主義を主張するが,近代社会の転換期にある現在プロブレマティークの自覚なしに多元主義を展開するとしたら,組織の何を理解したことになるというのか.
著者
永山 晋
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.44-58, 2021-06-20 (Released:2021-07-15)
参考文献数
69

機械学習をどのように活用すれば社会科学を発展させることができるのか.この問いを検討するため,本稿は現実の説明に向けた機械学習と,現実の制御に向けた機械学習の活用方法の2つの観点から既存研究を概観する.とりわけ,現実の制御に関する既存研究を,対象の制御形態としての最適化と拡張の観点から整理する.
著者
佐伯 胖
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.38-49, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
48
被引用文献数
6

「学習」をめぐって,行動主義心理学,認知心理学,認知科学,さらに状況的認知論がどのように扱ってきたかの歴史を振り返り,行動から認知,さらに社会との関連へと関心が移ってきた経緯を展望した.しかし,人が他者と共同的活動に参加するには,本当に人と人が「かかわりあう」ことが必要だが,その点が従来なおざりになっていることを指摘し,新たに「二人称的かかわり」を見直すことを提言する.
著者
鈴木 宏昭 横山 拓
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.4-15, 2016-06-20 (Released:2016-09-05)
参考文献数
42

本稿では,組織の中に蓄積された暗黙知の明示化,公共化に関わる困難を認知科学的に分析する.その困難は,意識化すら不可能な知識が存在すること,言語が断片的であるがゆえに状況の復元に十分なパワーを持っていないことに由来する.こうした困難を克服するためには,知識を,場の中でマルチモーダルシミュレーションによって生み出され,改変され続けるものとして捉えることが必要とされる.また状況や身体の情報を豊かに伝える象徴的言語の利用も知識の伝達には有効である.
著者
石井 晃
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.5-20, 2015-06-20 (Released:2016-04-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ヒット現象の数理モデル(石井他2012)を社会の中の人間間相互作用の力学として紹介する.このモデルを社会的ニュース,映画興行,ドラマ視聴率,AKB 選抜総選挙に応用した.
著者
鳥海 不二夫
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.47-59, 2015-06-20 (Released:2016-04-07)
参考文献数
13

インターネットの発達とともにWEB上には様々な情報が蓄積され,一般ユーザが自ら情報を発信するconsumer generated media(CGM)の発展はめざましい.ブログやソーシャルメディアの利用が一般ユーザで広まり,本稿ではTwitterのビッグデータとはどのようなものなのか,その具体的な内容について説明し,それらを応用した研究・実用事例を紹介する.最後に,実際にデータを使ってみたい方のために,データの収集方法について紹介する.
著者
大湾 秀雄
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.28-38, 2023-09-20 (Released:2023-09-30)
参考文献数
39

近年,経済学における人的資本理論の実証研究には大きな進展があったが,労働経済学者以外の研究者や政策担当者の人的資本理論に対する理解は十分ではない.本稿では,人的資本理論の重要な含意を整理すると共に,近年研究が進んだ領域を概観する.経営に対する有用な含意を含む研究成果として,特に,経営者や管理職層の人的資本,および社会的スキルの重要性の二つに焦点を当てる.これらの研究は,企業の生産性決定メカニズムを理解する上で重要な視点を提供する.最後に,今後更なる研究の蓄積が求められるテーマについても私見を述べたい.
著者
吉田 航
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20231001-1, (Released:2023-10-01)
参考文献数
40

本論文は,ダイバーシティ推進を目的とする部署の設置が、企業の女性管理職比率を高めているかを,国内大企業のパネルデータを用いて検証したものである.分析の結果,時代効果を考慮すると,部署の設置が女性管理職比率を平均的に高めているとはいえなかった.一方で,女性役員比率が一定の水準よりも高くなると,部署の設置が女性管理職比率を有意に高める効果が確認された.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-99, 2013-03-20 (Released:2013-10-17)
参考文献数
35
被引用文献数
5

本論文は,「癒し」という流行語が社会に波及する中で生じた意味創造プロセスを,20年分の雑誌記事タイトル8033件のテキスト分析を通じて明らかにする.特に注目をするのは,マーケティングを通じて新しい言葉が普及する一方で,こうした言葉の流行に乗る形でマーケティング努力の模倣が生じるという相互作用である.またブームが生じた理由を説くメディアの「理屈づけ」が,こうした相互作用を強化する可能性も指摘される.
著者
鈴木 竜太
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.13-19, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
4

本稿は,質の高い論文についての論考である.本稿では,質の高い論文の要素として「無駄や無理のない」ことと「意味のある」ことをあげている.質の高さには,意味のあることがより重要な要素ではあるが,それがきちんと読者に伝わり,示されるという点で,無駄や無理のないことも重要な要素である.質の高い研究をするだけにとどまらず,それをいかに質の高い論文に仕上げるかということも研究者の重要なイシューである.
著者
楠見 孝
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.6-15, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
30
被引用文献数
5

ホワイトカラーの熟達化と,それを支える実践知(暗黙知)の構造,その獲得について認知心理学の知見に基づいて論じた.そして,ホワイトカラーに質問紙調査を実施し,マネジメントの暗黙知の獲得は,管理職経験年数,経験学習態度,批判的思考態度,類推,省察,職場内の暗黙知と形式知の知識変換が関与していることを示した.最後に,個人学習と組織学習の相互作用が実践知の獲得を促進し,管理職への熟達を導くことを議論した.
著者
山住 勝広
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.50-60, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
49
被引用文献数
3

今日,人間の活動は,文化的に多様な組織の間でのネットワークや協働など,新しい形態に向けて,急速にパラダイム転換している.本論文では,活動理論と拡張的学習の理論にもとづき,時や場所,あるいは階層レベルを横断するような,仕事の現場における新しい学習の形態について検討した.そのさい,ノットワーキングと呼ぶことのできる新しい協働のパターンに注目し,その中での学習と主体性の形成に焦点化した事例の分析を行った.
著者
高橋 潔
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.26-38, 2001-06-20 (Released:2022-07-30)
参考文献数
27

能力主義や成果主義の人事施策を実施していくうえで,公正で透明性の高い評価を実施していくことは不可欠である.しかし,人事評価は従業員から不満をもたれ,その納得度が疑問視されることも多い.本研究では,20,761名の組合員から得られた調査結果ならびに,東海地域の製造業を中心とした企業に勤める従業員1,823名から得られた調査結果を分析し,どのような要因が人事評価の納得度を規定しているかを検討する.
著者
保城 広至
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.4-13, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1

社会科学者と歴史研究者との間には,認識論的あるいは方法論的に埋められない溝が存在し,両者の和解はとうてい不可能である,というのが一般的な理解である.保城(2015)では,そのような溝を埋めるための条件と方法論を提示し,両者の融合可能性を模索した.本稿ではその方法論の概略を改めて述べるとともに,その中で提案した「過程構築(process creating)」の具体例を紹介する.筆者の専門分野に即して外交政策決定過程の分析に特化するが,国家だけではなく企業や国際機関といった,他の組織分析にもその方法は有用であると考える.
著者
舟津 昌平
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.48-61, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
37

本研究の目的は,産学連携プロジェクトを題材として,制度ロジック多元性下において組織がどのように多元な制度ロジックを両立すべくコンフリクトに対応するのかについて明らかにすることにある.本研究は事例研究を通じて,科学ロジックと事業ロジックが構成する制度ロジック多元性が生み出すコンフリクトに対し,組織が科学とも事業とも異なる「第3のロジック」を道具的に活用して制度ロジックを両立することを明らかにした.
著者
沈 政郁
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.38-51, 2014-09-20 (Released:2015-02-17)
参考文献数
40
被引用文献数
5

本稿では能力が劣るにも拘わらず血縁関係で新規経営者になるという意味での血縁主義がどのような結果をもたらすかについて,日本の同族企業の長期データを用いて実証分析した.学歴を能力の代理変数として利用し,新規経営者をエリートと非エリートに区分して,非エリート親族承継をその他の事業承継タイプと比較した.単純なDID(Difference-in-Differences)分析,幾つかの要因を制御したDID分析,新規経営者になるまでの経験の違いを制御した回帰分析,事業承継イベントをランダム化するための操作変数推定の結果,非エリート親族承継は婿・婿養子承継及び非同族企業の専門経営者承継に比べて経営者交代前後で業績の悪化を示した.
著者
谷口 諒
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.66-81, 2017-06-20 (Released:2018-01-15)
参考文献数
60

本稿の目的は,組織論的視点から我が国の政策に係る問題を考察することにある.日本の重点政策下では,当該政策と本来関連の薄い政府事業が予算を獲得しており,予算を通じた「選択と集中」が必ずしも達成されているわけではない.こうした問題は,「便乗予算」として指摘されている.本稿では,シンボリック・マネジメントの分析枠組みを用いることで,重点政策下で便乗予算という組織病理現象が生じるメカニズムを考察する.
著者
酒井 健 井澤 龍
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.4-14, 2022-06-20 (Released:2022-09-17)
参考文献数
70

経営・組織論研究における歴史的転回では,経営・組織現象の「歴史的背景の研究」と,アクターが明示的に語った過去自体に焦点を当てる「歴史語りの研究」とが柱になってきたが,近年では後者が有力になっている.この状況認識に基づき,本稿では,この領域で今後有望になる研究を検討し,「埋め込まれた過去の使用」・「過去の使用の変化」・「イベント解明」・「ダイナミズム説明」という4つの針路を特定した.