著者
一瀬 早百合
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.199-210, 2016-03

障害のある子どもをもつ親のメンタルヘルスの実態を「保護者のためのこころのケア相談」における語りをKJ法にて分析し,明らかにした。障害のある子どもの出現は,一旦決着がついていた過去の解決されていない問題,原家族との関係やトラウマを再燃させることになると考えられる。子どもの出生以後の過度の疲労や傷つき体験が手当てされていないこと,さらに現在の生活における家族,特に夫との関係やママ友や所属集団での生きづらさがメンタルヘルスに負の影響を与えることになる。それらが長期化すると,自分自身のふるまいに不安を感じ,無価値な存在なのではないかという自己否定感が強まり,メンタルヘルスが危機的な状況となる。一方では,その焦りが子どもへの虐待へ向かう場合もある。メンタルヘルスサポートには現在の生活における家族や所属集団での「生きづらさ」だけではなく,過去からの様々な「傷つき体験」へのケアというライフヒストリーの視点が必要である。
著者
一瀬 早百合
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-En Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.199-210, 2015

障害のある子どもをもつ親のメンタルヘルスの実態を「保護者のためのこころのケア相談」における語りをKJ法にて分析し,明らかにした。障害のある子どもの出現は,一旦決着がついていた過去の解決されていない問題,原家族との関係やトラウマを再燃させることになると考えられる。子どもの出生以後の過度の疲労や傷つき体験が手当てされていないこと,さらに現在の生活における家族,特に夫との関係やママ友や所属集団での生きづらさがメンタルヘルスに負の影響を与えることになる。それらが長期化すると,自分自身のふるまいに不安を感じ,無価値な存在なのではないかという自己否定感が強まり,メンタルヘルスが危機的な状況となる。一方では,その焦りが子どもへの虐待へ向かう場合もある。メンタルヘルスサポートには現在の生活における家族や所属集団での「生きづらさ」だけではなく,過去からの様々な「傷つき体験」へのケアというライフヒストリーの視点が必要である。
著者
一瀬 早百合
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67-79, 2011-08-31

地域療育システムが整備され,20年余り経過している.その前提には「障害の早期発見・早期療育」が望ましいものであるという認識がある.本稿では,乳児期に発見される障害に限定し,早期の段階に特定した母親の変容プロセスを明らかにした.研究方法としては,わが子が障害であるという経験をした母親の感情や認識,他者との相互作用に焦点をあてるため質的研究法を採用した.早期の段階の母親の経験とは,《自己のポジショニング》の揺らぎをめぐる物語であった.母親の《自己のポジショニング》とは,自己のイメージという<自己>そのものと,自己と他者,広くとらえれば自己と環境との接点である<関係>の2つを包含するものであった.この変容プロセスには「再生」「逃避」「獲得」「境界」という4つのストーリーが見いだされた.