著者
奥野 瑛 三上 俊成 武田 泰典 田中 光郎
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.117-123, 2014

患児は6歳7か月の男児で, X線所見で上顎正中部に逆生の埋伏過剰歯を発見され近歯科医院より紹介来院し,当科にて上顎正中埋伏過剰歯の抜去を行った.同患者は, 2年半後,近医において,上顎右側中切歯と上顎右側側切歯の萌出遅延と診断されたため,その治療目的で,本院に再度受診した.側切歯は犬歯の圧迫により高度に歯根吸収を生じていた.そのため,中切歯をリンガルアーチならびにマルチブラケット装置による牽引を試みたが,中切歯の移動は認められなかった.その後, 2回中切歯の亜脱臼と外科的処置を併用し,牽引を続行したが,中切歯の挺出はみとめられず,抜歯に至った.抜去歯には遠心舌側歯頸部に陥凹が認められるとともに,病理組織所見では骨置換性の根吸収が生じていた.
著者
三上 俊成
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-11, 2005-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
43
被引用文献数
1

キシリトールを配合したガムを噛むことは,齲蝕感受性が高く,また上手に歯磨きを行えない小児に対して推奨できる齲蝕予防法であると考えられる.このガムにフッ化物を配合して歯質の脱灰を抑制しその再石灰化を促進するには,低濃度で安全なフッ化物配合量での再石灰化促進効果を調べる必要がある.本研究では10%キシリトール溶液に低濃度フッ化物を段階的に添加した場合のヒトエナメル質再石灰化促進効果についてCMR法を用いて検討し,さらに試作したフッ化物配合キシリトールガムの再石灰化促進効果を,市販の再石灰化促進物質配合キシリトールガムとin vitro試験およびin vivo試験で比較した.その結果,10%キシリトールと0.4PPm以下のフッ素を添加した再石灰化液では対照(0PPm F)に対して再石灰化率の増加に有意差がみられなかったが,0.8ppm以上では再石灰化率の増加に高い有意差が認められた.再石灰化促進効果がフッ素濃度0.4ppmと0.8ppmの問で大きく変化したことは,フッ素濃度が低い場合にはキシリトールが抑制的に働く可能性を示唆していた.フッ化物を配合した試作ガム(2μgF/枚)は,in vitro試験では2種類の市販ガムの中間の再石灰化効果を示し,ヒト口腔内では効果が低い方のガムと同程度であった.