著者
三和 義秀
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.92-110, 2013-02-20 (Released:2013-04-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では,主人公への理解が成立する小説においては読者のパーソナリティ特性と物語理解における認知的評価との間には因果関係があり,その関係を介して読後の感情状態が形成されるモデルを仮説とした.そして,111 名の被験者の性格と共感性,4 点の短編小説に対する認知的評価,及び読後の感情状態を測定し,共分散構造分析によって仮説モデルの妥当性を検証した. その結果,主人公に対する理解が成立した2 点の素材においては仮説モデルが採択され,外向性や協調性が高い読者ほど共感や同情が強まる因果関係が認められ,その関係が読後の否定的な感情状態の形成に影響する傾向が示された.一方,主人公の理解が抑制された2 点の素材においては仮説モデルが採択されなかった.これらのことから,主人公に対する理解が成立する小説においては,読者のパーソナリティ特性と認知的評価との間の因果関係を介して読後の感情状態が形成される可能性を示唆した.
著者
三和 義秀
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.59-76, 2010-12-21 (Released:2010-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では,130 名の被験者の性格を主要 5 因子性格検査とMMPI(ミネソタ多面性格検査)を用いて測定した.そして,性格測定とは独立して同じ被験者に6 点の素材(短編小説)を読んでもらい,それぞれに読む前と読んだあとの感情状態について多面的感情状態尺度で測定し,性格と感情状態の変化との関連性について分析した.その結果,単相関分析と重回帰分析の両方において,相関係数と決定係数の値は全体的に低かったが,主要 5 因子性格検査では 5 点の素材,MMPI では 6 点のすべての素材において感情状態と有意な相関をもつ性格尺度が存在した.このことから,性格の個人差を基に検索者ごとに異なる読後の一部の感情状態の強さを予測できる図書検索システムを開発できる可能性を示唆した.