著者
矢野 宏二 三宅 敏郎 浜崎 詔三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-40, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2

1. 1980年6月山口市でコメツブウマゴヤシ上で発生増殖しているTherioaphis trifolii (MONELL)s. lat.アルファルファアブラムシ個体群を採集,続いて山口県美東町ですくい取りにより有翅胎生雌虫1個体を採集した。翌1981年6月には山口県下各地および福岡市郊外における分布が判明,寄主植物としてさらにウマゴヤシとアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)が確認された。一方,1944年5月福岡市でMedicago sp.から採集された標本も調査し,日本での発生を確認した。日本の個体群は既知の2型,trifolii s. str.とmaculataの中間的な形態を示すが,maculataにやや近い。2. 山口市では6月にのみ発生がみられ,現在判明した主要寄主植物コメツブウマゴヤシの地上部の消滅に応じてみられなくなり,その前後の生態はわかっていない。予想される生活環の内,寄主植物上での通年増殖ないし胎生雌虫あるいは卵による越冬の可能性は少ない。暖地からの飛来有翅虫による1年毎の発生をすることも考えられるが,ウマゴヤシ類より移動した他の植物上における胎生雌虫,あるいは卵による越冬が可能性としては大である。3. 山口市における発生期間が限られている原因は上記とも関連するが明らかでない。多雨など物理的要因以外に寄主植物の適否も含めた生物的要因の存在が考えられる。
著者
三宅 敏郎 満井 喬
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-24, 1995
被引用文献数
2

抗幼若ホルモン活性物質として知られるプレコセン2のセジロウンカに対する生物活性を検討した. その結果, プレコセン2は, 処理時のウンカのステージ, 処理期間 (取り込み量) を変えることにより1) 速効的な殺虫活性, 2) 早熟変態 (prothetely, 抗幼若ホルモン活性), 3) 過剰脱皮 (metathetely, 幼若ホルモン様活性) という3種の異なった作用を引き起こすことが認められた. このうち, 早熟変態については幼若ホルモン様活性物質であるNC-170の同時処理により作用の発現が打ち消されたが, 天然のJH-1, JH-2, JH-3の同時処理では打ち消されなかった. 一方, 抗幼若ホルモンであるプレコセン2が, なぜ metathetely を誘起するのかは不明であるが, 今回の実験結果における"処理期間と metathetely 発現との関係", および, 過去, バッタ類で観察された同様の結果から推測すると, 虫体に取り込まれたプレコセン2の量が不十分であると, アラタ体を完全に不活性化できず, 逆に幼若ホルモンの生合成/分泌を一時的に促進する効果があるものと思われる.