- 著者
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三島 孔明
藤井 英二郎
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, pp.201-207, 1991-03-01
- 被引用文献数
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植物のもつ心理的効果について調べるために,植物の視覚的構成要素の一つである色と脳波の関係について分析した.視覚対象として色布を用い,黄,緑,白,青,黒,赤,紫,灰の順に被験者に呈示し,それぞれの対象物をみているときのα波,β波,θ波の発生量を比較検討した.その結果,ほとんどの色においてα波とβ波,α波とθ波の間には比例的関係がみられた.このことは,ある色を見たときの脳波を構成するα波とβ波,ないしはα波とθ波の割合が多くの人でほぼ一定であることを意味している.各色におけるα波とβ波,θ波の相関係数を検討すると,黄では男女ともにそれらの相関係数が高く,逆に灰ではα波とθ波の相関係数が男女とも低くなった.このことは,黄を見たときのα波とβ波,θ波の割合が男女それぞれにおいて被験者間にばらつきが少なく反応に個人差が少ないことを意味しており,逆に灰をみたときは男女ともα波とθ波の割合に個人差が大きいことを意味している.次にα波に対するβ波,α波に対するθ波の回帰直線の傾きについてみると,ほとんどの色で男女ともα波に対するβ波の傾きがα波に対するθ波の傾きに比べて大きくなった.このことは,α波はβ波が増加してもあまり増えないがθ波が増加すると大きく増えるようになることを示しており,α波はβ波が多く出ている状態では出にくく,θ波が多い状態で出やすいことを意味している.青,白,緑ではα波に対するβ波の傾きが女性で大きく,男性で小さくなった.また,α波に対するθ波の傾きは黄,白,黒で男性が大きく,女性が小さくなった.黄,白,黒については,現時点でθ波の意味やα波とθ波の関係がほとんど研究されていないことからさらにその意味を考察することは困難である.しかし,緑と青でみられた性差については,α波やβ波の一般的傾向を合わせ考えると,これらの色をみたとき男性は女性に比べてより緊張感が少ない状態にあるものと考えられる。