著者
江川 雅之 並木 幹夫 横山 修 鈴木 孝治 布施 秀樹 三崎 俊光
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.17, no.8, pp.943-946, 2004-08-01

1987年から1996年に, 北陸地区で治療された457例の臨床病期B前立腺癌について調査し, 特に内分泌療法(248例)と前立腺全摘除術(199例)を比較した. この2群間では, 全生存率, 疾患特異的生存率ともに差はなく手術の優位性は示されなかった. 組織型別では, 内分泌療法が施行された高分化癌(56例)で癌死症例は認められなかったが, 低分化癌(49例)の予後は不良であり全摘群との間に有意な差が認められた. 臨床病期B前立腺癌に対する標準治療法として, 米国ではNCI-PDQが, ヨーロッパではEAU Guidelinesなどに代表される, エビデンスに基づくガイドラインが示されている. NCI-PDQでは, リンパ節郭清を伴う前立腺全摘除術や外照射療法に加え, careful observationなどが推奨されている. 内分泌療法は, neoadjuvant hormone therapy(NHT)がclinical trialとして施行可能である. 一方ヨーロッパでは, 期待余命10年以下の高および中分化癌でwatchful waiting, 低分化癌で放射線療法が推奨されている.