著者
重原 一慶 島村 正喜 並木 幹夫
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.905-909, 2013-06-01

陰茎癌は人口10万人当たり約0.04~4.0人と稀な悪性腫瘍である. 陰茎癌患者の多くが包茎を合併していることや, 新生児期に割礼手術を受けるユダヤ教徒には陰茎癌はほとんど認められないことなどから, 包茎が陰茎癌の最大のリスク因子であると考えられてきた. しかし近年の研究で, 陰茎癌の約半数の症例でヒトパピローマウイルス感染が関与していることがわかってきた. 本稿では, 陰茎癌の疫学と病因について解説する. [はじめに] 陰茎癌は男性の悪性腫瘍のなかで0.5%未満と稀な癌である. その罹患率は, 人口10万人当たり約0.04~4.0人と報告され, 発症年齢は60歳台に最も多いとされている1). 従来は, 陰茎癌患者の多くが包茎を合併していることや, 新生児期に割礼手術を受けるユダヤ教徒などには陰茎癌はほとんど認められないことなどから2), 包茎によって包皮内側に恥垢を含めた様々な微生物や分泌物などが貯留し, 慢性刺激により発癌を促していると考えられてきた.
著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 藤田 秀人 林 泰寛 高村 博之 谷 卓 太田 哲生 萱原 正都 望月 健太郎 蒲田 敏文 松井 修
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.609-614, 2011

膵癌では, borderline resectableと言えども局所癌遺残のないR0が得られなければ切除の意義は低い. 膵頭部癌切除標本の検討では病理組織学的にborderline resectableとなる主要因子は"mesopancreas"への進展である. Mesopancreasへの進展範囲はMDCTによって正確に診断可能で, 主腫瘍から連続する粗大網状影, 索状影として捉えられる. R0を得るためには, MDCTで詳細に術前進展範囲診断を行った上で術式立案をすべきである. 特にmesopancreasに関連した, 膵頭神経叢~上腸間膜動脈神経叢への浸潤, 門脈系への浸潤, 上腸間膜動脈への浸潤には注意を払う必要があり, R0のためには, 上腸間膜動脈神経叢全周郭清, 門脈合併切除, 上腸間膜動脈合併切除も考慮する必要がある. 「はじめに」膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術は高難易度, 高侵襲であるが, 依然予後は不良で, 近年の抗癌剤治療の進歩に伴い, "切除"の意義が問われている.
著者
江川 雅之 並木 幹夫 横山 修 鈴木 孝治 布施 秀樹 三崎 俊光
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.17, no.8, pp.943-946, 2004-08-01

1987年から1996年に, 北陸地区で治療された457例の臨床病期B前立腺癌について調査し, 特に内分泌療法(248例)と前立腺全摘除術(199例)を比較した. この2群間では, 全生存率, 疾患特異的生存率ともに差はなく手術の優位性は示されなかった. 組織型別では, 内分泌療法が施行された高分化癌(56例)で癌死症例は認められなかったが, 低分化癌(49例)の予後は不良であり全摘群との間に有意な差が認められた. 臨床病期B前立腺癌に対する標準治療法として, 米国ではNCI-PDQが, ヨーロッパではEAU Guidelinesなどに代表される, エビデンスに基づくガイドラインが示されている. NCI-PDQでは, リンパ節郭清を伴う前立腺全摘除術や外照射療法に加え, careful observationなどが推奨されている. 内分泌療法は, neoadjuvant hormone therapy(NHT)がclinical trialとして施行可能である. 一方ヨーロッパでは, 期待余命10年以下の高および中分化癌でwatchful waiting, 低分化癌で放射線療法が推奨されている.
著者
並木 幹夫 高 栄哲 小中 弘之 杉本 和宏 重原 一慶
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-54, 2010-01-01

「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き作成の経緯」加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism:以下, LOH症候群)は男性ホルモンの部分欠乏に因る症状, および徴候からなる症候群であるが, 以前は加齢に伴う生理現象とされ, 診療対象ではなかった. しかし, 高齢化社会の到来により, 高齢者のQOLをいかに維持するかが, 21世紀医療の大きなテーマとなってきた. ところが, 女性に対するホルモン補充が国際的に広く普及しているのに対し, 高齢男性に対する医療はEDに対するphosphodiesterase type 5阻害薬の普及以外, あまり医療の対象となってこなかった. このような高齢男性への医療対策の遅れが直接原因ではないものの, 近年男女間の平均寿命の差が大きく開き, 本邦では約7歳男性寿命の方が短い. この事実がWHOを後押しし, 1998年にGeneve Manifestが発せられるに至り, "Healthy aging for men"がようやく国際的な流れになってきた.
著者
寺川 裕史 牧野 勇 正司 政寿 中沼 伸一 酒井 清祥 林 泰寛 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 高村 博之 二宮 致 北川 裕久 伏田 幸夫 藤村 隆 尾山 武 井上 大 小坂 一斗 蒲田 敏文 太田 哲生
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 = The Biliary tract & pancreas (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.481-485, 2014-05-01

症例は56歳, 男性. 検診にて膵頭部腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 腹部USでは膵頭部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は多彩なエコー輝度が混在するモザイク状であった. CTでは膵外に突出する境界明瞭な多房性嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁および隔壁に造影効果を認めた. MRIにおいては自由水の信号と比較してT1強調像ではより高い信号, T2強調像ではより低い信号, 拡散強調像ではより高い信号を呈しており, 粘調度や蛋白成分の高い内容物の存在が示唆された. 年齢, 性別, 画像所見およびCA19-9高値などを総合的に評価し, lymphoepithelial cyst (LEC)を第一に疑った. 他の膵嚢胞性疾患が否定できないため切除生検としての腫瘍核出術を施行し, 病理学的にLECと診断した. 詳細な画像検査に加え, 性別やCA19-9値などを総合的に評価することにより, 膵LECを疑うことが可能であると考えられた.
著者
勝岡 洋治 並木 幹夫 酒井 英樹 鈴木 和浩 鈴木 啓悦
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.809-823, 2013-05-01

前立腺癌に対する薬物療法の根幹ともいえるのはホルモン療法(内分泌療法)であり, 現在わが国で最も一般的に用いられているホルモン療法は, LH-RHアゴニストおよび抗アンドロゲン薬の併用療法あるいは単独療法である. LH-RHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(リュープリン(R))は, 2012年9月に発売20周年を迎え, その有効性と安全性が医療現場で裏付けられた長い歴史をもつ薬剤であるが, 近年新たにGnRH(LH-RH)アンタゴニストが発売され, 現在, 他の新規ホルモン療法薬も次々と開発されており, 今後ホルモン療法による治療成績が, 飛躍的に向上することが期待されている. そこで, 本日は前立腺癌治療のエキスパートの先生方にお集まりいただき, 前立腺癌治療におけるLH-RHアゴニストとアンドロゲン遮断療法を振り返るとともに, 新薬GnRHアンタゴニストの位置付けについても論議していただいた.