著者
長谷川 陽一 吉田 明弘 三嶋 賢太郎 高田 克彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

花粉化石に含まれる分解が進んでいるDNAを解析するためには、1細胞あたりに多数コピーが含まれる細胞質DNAを用いる必要がある。スギの葉緑体DNA(cpDNA)には、多くのマイクロサテライト(SSR)領域が含まれていることが明らかになっているが、スギの葉緑体SSRの多様性を天然林集団で明らかにした研究はない。そこで本研究では、高標高のスギ天然林集団として八甲田山1・2と秋田駒ケ岳カルデラ内の3集団を、低標高の集団として鰺ヶ沢、碇ヶ関、仙岩峠、鳥海、雄勝峠の5集団を対象として葉緑体SSR18座とクローン識別用に核SSR5座を用いた解析を行った。高標高の集団の、八甲田山1では全10サンプルが1クローンと、八甲田山2では全45サンプルが8クローンと、秋田駒ケ岳では全19サンプルが1クローンと推定された。また、八甲田山2における8クローンは全て、葉緑体SSRを使っても識別することが可能であった。低標高の集団では、69%~96%の個体が葉緑体SSRマーカーによって識別可能であった。これらの結果から、スギ天然林集団において葉緑体SSRマーカーに遺伝的多様性があることが明らかになり、花粉化石のDNA解析に使用できると考えられた。
著者
樋口 有未 松本 麻子 森口 喜成 三嶋 賢太郎 田中 功二 矢田 豊 高田 克彦 渡辺 敦史 平尾 知士 津村 義彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.247-251, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2 3

ヒバの天然林集団と選抜集団の遺伝的多様性および集団間の遺伝構造を明らかにするため, 北海道, 青森県, 岩手県, 新潟県, 石川県のヒバ天然林集団 (1道4県7集団) と育種が盛んな青森県, 新潟県, 石川県の3県の選抜集団を対象に, 5座の核のマイクロサテライトマーカーを用いた解析を行った。青森県, 新潟県, 石川県の3県の天然林集団と選抜集団の遺伝的多様性は同程度であった。STRUCTURE解析およびNJ系統樹の結果, 新潟県と石川県の天然林集団と選抜集団がその他の集団と遺伝的に異なることが示された。NJ系統樹の結果は各集団の地理的な位置関係を反映しており, 3県の選抜集団がそれぞれの天然林集団から選抜されたことが支持された。検出されたヒバ天然林集団間の遺伝構造は, 天然林の分布変遷や選抜集団の由来に起因していると考えられた。