著者
山中 勤 三谷 克之輔 小野寺 真一 開發 一郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.113-125, 2005-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

遊休農林地の放牧地への転換が,瀬戸内海や流域圏地下水の水質環境に及ぼす影響を予測するための基礎資料として,風化花崗岩を母材とした貧栄養土壌から成る牧草地において,年間の水・熱・物質収支を実測値に基づいて評価した.年降水量1,262mmに対して,地下水涵養量はおよそ4割の523mmであったが,その半分近くは1999年9月の豪雨時に生じていた.水の下方移動速度は年平均で約7mm/day,豪雨期を除くとおよそ3mm/dayであった.蒸発散量は年降水量のおよそ6割を占め,それによる消費エネルギーは年間正味放射量(2,712MJ/m2)の約3分の2に相当した.蒸発散量は日射量の季節変化や植生の状態に強く規定されていた.元素ごとにみた溶脱フラックスは,大気降下フラックスのおよそ2倍から9倍程度であり,施肥およびそれに付随する土壌中のイオン交換反応に依存していたが,窒素の溶脱率は7%未満とかなり小さかった.すなわち,硝酸性窒素汚染や水域の富栄養化といった観点からは,牧草地における適度な施肥は大きな問題とならないことが確認された.ただし,植生状態の管理や施肥のスケジューリングなどによって溶脱率が変化する可能性があることには注意を要する.