- 著者
-
小林 政広
小野寺 真一
加藤 正樹
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.3, pp.287-294, 2000-08-16
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
6
年間を通じて地下水面が存在する平地林において, ヒノキ樹幹近傍の土層中のマトリックポテンシャルの測定を行い, 雨水浸透過程における樹木の存在の影響を, 土壌の乾湿条件と降雨条件との関係から検討した。湿潤な先行水分条件下では, 樹幹流として供給された多量の雨水が鉛直下方へ集中的に浸透し, この雨水は樹幹直下の地下水をかん養した。乾燥した先行水分条件下では, 樹幹流による集中的な雨水インプットが生じても, 雨水の大部分は樹木根系の吸水による土湿不足を解消することに消費され, 樹幹直下における集中的な浸透は発生せず, 樹幹から離れた部分でのみ地下水がかん養された。また, 湿潤時, 乾燥時ともに特定の場所においてバイパス流の発生によると考えられる局所的なマトリックポテンシャルの上昇が観測された。このようなバイパス流は, 総降水量が多く強度の強い降雨イベントで発生しやすい傾向が認められた。しかし, 土層が乾燥しているときには, より少ない雨で発生する傾向が認められ, これは表層土壌の撥水性のためと考えられる。