著者
佐藤 美樹 荒木田 美香子 金子 仁子 三輪 眞知子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.121-133, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
32

目的 本研究の目的は,幼児を持つ親の家族エンパワメント尺度(Family Empowerment Scale for Parents with Toddlers,以下FES-P)を開発し,妥当性と信頼性を検討することである。方法 まず,先行文献の検討と専門家への面接調査に基づき,尺度原案を作成した。次いで,全国の1~3歳児を持つ親800人(男性400人,女性400人)を目標回答数とし,インターネットを活用した構成的質問調査を実施し,FES-Pの妥当性と信頼性を検証した。さらに,再テスト法による再現性と安定性を検討した。結果 回答の得られた825人(男性412人,女性413人)を分析対象とした。因子分析の結果,5因子26項目で各因子の解釈が可能な最適解を得た。5つの下位因子は「家族との関係性」,「育児の効力感」,「地域とのつながり」,「親役割達成感」,「サービスの認知と活用」からなることが確認された。モデルの適合度は,GFI = .878,AGFI = .852,CFI = .943,RMSEA = .044と良好な適合値が得られ,構成概念妥当性が確認された。Cronbach's α係数は尺度全体で.96,下位因子では.85~.92であり,十分な内的整合性をもつと判断された。また,FES-P総得点とFamily APGER Score(r = .562, P<.001),育児感情尺度の肯定感(r = .620 P<.001),特性的自己効力感尺度(r = .318 P<.001)との間には正の相関が認められた。再テスト法による級内相関係数は,尺度全体でr = .876,下位因子ではr = .794~.876であり,安定性と再現性が確保できた。結論 本研究では,26項目,5つの下位因子からなる一定の妥当性および信頼性を有するFES-Pが開発された。5つの下位因子は相互に関連する構成概念であり,「育児の効力感」と「親役割達成感」は個人的なエンパワメントに関する項目,「家族との関係性」と「地域とのつながり」は他者との関係性に関する項目,「サービスの認知と活用」は社会資源に関する項目で構成されていた。
著者
金子 仁子 標 美奈子 増田 慎也 宮川 祥子 三輪 眞知子 渡邊 輝美 及川 智香子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、青年期の人々が容易に学習機会の得られるインターネットを使用して、子育てをバーチャルに体験しながら、人を世話することの楽しさや人間として成長していくことを実感でき、また人間関係の取り方を学べる子育て学習支援プログラムの開発である。まず、大学生を対象に子育ての経験、子育てのイメージに関する質問紙調査を行った。525名のデータについてクラスター分析を行った結果、子育てに関して5つのタイプに分けられ、学習内容の興味関心もそのタイプによって違いがあった。ドラマ部分の作成は、研究者メンバーの話し合いから導き出した、「12の意図」(子育ての生活のイメージ、子育ての楽しさ・子育ての大変さ、予測していなかったできごとへの対応、子どもの成長を実感(2歳まで)、子どもとのコミュニケーションの取り方、仕事を続けていく母親の子育てについて等)により、その内容を考えさせるものとした。ドラマはフラッシュを用いて漫画を動画化し5話のドラマとしてウェブサイトから配信した。ドラマの配信は平成18年6月から行い平成19年3月までの10ヶ月間のアクセス数は985件で、視聴するための登録者は35名で、うち6割が学生であった。ドラマの内容についてはウェブサイト上のアンケートでは第1話では、仕事との育児の両立を考えながら視聴していることがわかり、また、第2話では結婚・出産・育児についてのことが最も印象に残ったとしていた。このドラマの評価のためのグループインタビューを行った。その中で、学生達は乳児期の育児、仕事と育児の両立について関心が高いことが明らかになった。このドラマを見ることによって、大学生は仕事と育児の両立について具体的にイメージすることができたと考える。登録者同士の交流を図るため掲示板を設けたが記載する人は少なく、登録者を増やすための、ウェブデザインの改良等が必要である。
著者
岩清水 伴美 鈴木 みちえ 三輪 眞知子
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

A市をモデル地区に保育者の認知的スキルに働きかける虐待予防と支援技術向上プログラム開発とその評価をすることを目的に研究を実施した。教育プログラムは、保育者への調査をもとに作成した。プログラム内容は、虐待への理解、虐待による子どもへの影響、保護者への支援方法、子どもへの支援方法、事例検討である。教育プログラムを受講した40名の保育者は、受講前後の調査により虐待の知識と虐待対応の意識は有意に高くなり、子どもへの対応の視点も具体化した。