著者
上原 作和
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.16-28, 1991-12-10

「内侍のかみ」巻において、従来、難解とされてきた「蓬莱の悪魔國に不死薬・優曇華取りにまかれ」の一節の出典論的解釈から出発し、この条が朱雀帝・仲忠の問答による俊蔭巻以来の琴の物語史の発展的な完結を企図した修辞(レトリック)であったとする試案を提出する。そして、この問答体の形式を踏まえた<語り>の方法が、構造的に《三周説法》を型取りつつ、相互関連本文(インターテクスト)を媒介とした《類想》によって、物語の展開を規定していると措定する。