著者
上原 泉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1-13, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本稿では,教育心理学会第55回総会と,2012年7月から2013年6月末までに『教育心理学研究』『発達心理学研究』『心理学研究』『Japanese Psychological Research』で発表された乳幼児に関する研究の動向を3つの領域に分けて概観した。乳幼児の認知発達に関する研究の関心は,主に,非言語的な認知,言語,数,社会性であり,養育者や保育者が関連する研究の関心は,主に,子どもの自己制御機能,子どもの認知・行動と養育者の接し方との関連,養育者や保育者の認識・行動であった。保育・教育環境に関する研究の関心は,主に,幼児期の保育・教育のあり方や保育の質であった。これらの知見の学術的意義と教育的意義について述べた。最後に,教育心理学会ならではの教育的視点から,多岐にわたる知見を統合する必要性について論じた。
著者
川﨑 采香 上原 泉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-40, 2020-08-31 (Released:2020-09-24)
参考文献数
45

自伝的記憶とは自分史の一部をなすような,過去の個人的な出来事の記憶であり,そのあり方や語られ方に文化差や性差,発達差がみられる可能性が指摘されているが,日本人の思春期を対象とした研究はほぼ行われておらず,その自伝的記憶の内容や発達的特徴は不明である.本研究では,日本人中高生に重要な自伝的な出来事を想起するようにもとめ,その内容と経験時の年齢,伴う感情などを調べた.まず,中高生男女が想起した内容をカテゴリーに分類した結果,カテゴリーは概ね共通し,学校に関する出来事(入学,卒業,部活動など)が多く含まれた.一部の出来事カテゴリーにおいて,中高差や男女差がみられた.また,中学生は12歳,高校生は15歳に経験した出来事をほかの年齢よりも多く想起することが示された.感情別に見ると,これらの時期に想起量の山がみられたのはポジティブ感情もしくは両方(ポジティブとネガティブが混ざっている)感情を伴う出来事のみであった.日本の中高生の自伝的記憶の特徴について,発達差や性差も含めて考察した.