著者
小倉 剛 大塚 愛 川島 由次 本郷 富士弥 上地 俊徳 織田 銑一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.149-155, 2000 (Released:2018-05-05)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ジャワマングースの肛門傍洞内容物を用いた効果的な捕獲方法を検討するために, 肛門傍洞の形態の観察と肛門傍洞内容物に含まれる揮発性脂肪酸の同定を行った。本種の肛門傍洞の導管は, 肛門管皮帯内側に開口していた。肛門傍洞の分泌物貯留部は, 肛門管の左右に位置し, 直径は5mm程度で, 貯留部の一側の重量は平均約10mg/100g BWであった。組織学的には, 脂腺と考えられる発達した房状全分泌腺と, 観察頻度は極めて低かったが管状のアポクリン腺が肛門傍洞の周囲に観察された。肛門傍洞の内容物からは, 酢酸, プロピオン酸, イソ酪酸, 酪酸, イソ吉草酸および吉草酸の6種類の揮発性脂肪酸が同定された。また, 数種類の同定できなかったピークが存在した。雄の6種類の揮発性脂肪酸の構成比には一定の傾向が認められなかったが, 雌では酢酸が高い構成比を示し, イソ酪酸と吉草酸は低い構成比を示した。これらの傾向は, フィジーに移入された同種と類似していた。他の食肉目と比較した場合, 種特異的な揮発性脂肪酸は同定できなかった。今後, ジャワマングースの捕獲にこれらの成分を応用するためには, 未同定揮発性脂肪酸の同定と主要揮発性脂肪酸の季節や個体成長に伴う消長を把握する必要がある。