著者
宮崎 昭 上坂 章次 池田 清隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.133-140, 1967

イネ科青刈飼料作物の硝酸塩含量の草種,系統による差異を知るために,春の青刈飼料4種,夏の青刈飼料3種をそれぞれ同一条件下で栽培しその硝酸塩を定量した.また青刈トウモロコシについては10系統を用いて同じくその硝酸塩を定量した.第1試験では春の青刈飼料としてエンバク,ライムギ,オオムギ,コムギを用い1965年4月6日から約10日目ごとに5回刈取り,その硝酸塩を定量した.その含量は全般に少なく乾物中KNO<sub>3</sub>として2%以下であり,生育に伴う変化もそれほど著しくはなかつた.しかし全期間を通して青刈コムギの硝酸塩含量は他の3種のそれより少なく,つねに1/2程度であつた.またコムギを除いて他の3種の作物の硝酸塩含量は刈取期ごとに異なつていたので,いずれが,より硝酸塩を蓄積しやすいということはなかつたが,出穂期にはオオムギにやや多くの硝酸塩が含まれており,乾物中KNO<sub>3</sub>として1.08%であつた.第2試験では夏の青刈飼料としてトウモロコシ,ソルガム,テオシントを用い1965年8月24日から約8日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.本試験では生育の初期に40日余り降雨がなかつたので,最初の2回の刈取期には硝酸塩含量はいくぶん少なかつたが,そののち雨が降ると非常に高くなり,乾物中KNO<sub>3</sub>として5%以上となつていた.しかしその後は生育期が進むにつれて減少し,出穂期ごろには1%前後であつた.つぎに草種による差異をみると,全期間にわたつて硝酸塩含量がつねに高いものはなかつたが,生育の後期にはソルガムにやや硝酸塩が多いようであつた.第3試験では青刈トウモロコシ10系統を用い,1965年6月22日から約7日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.まず青刈トウモロコシの硝酸塩含量は刈取期が早いときには乾物中KNO3として6~10%も含まれていたが,生育期が進むにつれて激減し,ふつう青刈飼料として用いる程度に生育したものではその硝酸塩含量は大低の場合1.5%以下であつた.つぎに系統による差異をみると,各刈取期ごとに硝酸塩を多く含むものとそうでないものと量あつた.そして生育期のはじめごろには系統間の差異は大きいようであつた.これら3つの試験において,青刈飼料作物の硝酸塩含量は環境条件によりかなり影響されるようにみうけられた.したがつて硝酸塩を多く蓄積しない作物をみつけていくには,草種,系統による硝酸塩蓄積の差異を知ることは大切であるが,硝酸塩蓄積に大きな影響を及ぼす環境条件を知ることも大切であろうと推察された.
著者
上坂 章次 堀 力
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.153-158, 1950

カゼインの高周波乾燥について予備的な試験を行い次の如き成績を得た。<br>1 平板極板を用いても金網極板を用いても生カゼインの乾燥效果には大差ないようである。<br>2 極板距離の小なる場合即ち電界強度の大なる場合程温度の上昇も速く,乾燥速度も速い。<br>3 生カゼインの厚みが薄い程温度上昇は早く,乾燥時間は短かくてすむ。<br>4 カゼインの乾燥に高周波を応用することは普通の方法では乾燥温度が余りに高くなるために品質を惡化する。<br>5 この乾燥温度をなるべく少くするために出力を落として照射したが乾燥時間が徒らに長くなり,かつ温度も相当高くなつて目的を達しなかつた。また扇風機を用いて送風しながら乾繰したが温度の上昇はまぬがれなかつた。
著者
羽部 義孝 上坂 章次
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.40-50, 1946

第3産及第4産を分娩せる和牛2頭(鳥取縣入頭郡産豫備登録牛及補助登記牛)に付其の分泌乳の理化學的性状を調査し凡そ次の如き成績を得た。<br>(1) 3産若くは4産の和牛の泌乳期は大約5ヶ月である。<br>(2) 分娩後約5ヶ月間搾乳した結果に依れば總乳量577kg及661kg、最高日量10.3kg及12.3kg、平均日量4.1kg及4.7kgであつた。又平均脂肪率は4.4%及3.9%にしてその最高は7.0%、最低は3.0%である。<br>(3) 和牛常乳の比重は1.033、酸度は0.23%、1c.c.中の細菌數は約85萬である。又1c.c.中の脂肪球數は約26億である。脂肪球の大きさは3.3μにしてホルスタイン種よりは明らかに大きく又シヨートホーン種よりも稍大きく、ジヤージー種よりは稍小さい。<br>(4) 和牛常乳の分析こ依る化學組成は大略水分86.83%、固形物13.17%、脂肪4.42%、蛋白質3.62%、乳糖442%、灰分0.74%である。即ち普通市乳に比し蛋白質及脂肪の含量多く、乳糖及灰分は大差はない固形は從つて多い。<br>(5) 和牛の乳より製したバターの組成は大略水分16.62%、粗脂肪81.81%、無水無脂固形物2.04%、カゼイン0.61%、灰分0.076%であり、其の乳脂の〓化價218.53、沃度價30.67、ライヘルトマイスル價27.7、溶融點33~35°Cである。<br>(6) 之を要するに和牛の乳汁は一般乳用牛の乳汁と比較し特別なる注意を要すべきものでなく、良く飲用に適し利用可能である。但し經濟上搾取販賣には乳用牛の如く有利なるものに非らず、專ら自家消費隣組利用に供すべく即ち各自高温殺菌を行つて飲用すべきである。之れ農用牛の本質上當然のことゝ言ふべきである。<br>(7) 和物泌乳は期間短く且つ分娩10數日後より泌乳は急激減少の一途を辿り、末期に近づくに従つて乳脂率頗る昂上し途には8%に近き高率を示すに至る故、之を乳幼兒等の飲用に供する場合には常に此の點に留意して其の方法宜しきを得る如くしなければならない、即ち知牛の乳の飲用に當つては高率の脂肪を念頭に置き適當稀釋して乳幼兒に給與するが宜しい。