- 著者
-
井上 卓也
杉木 大輔
池上 敬一
上尾 光弘
上山 昌史
山下 勝之
織田 順
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.5, pp.262-271, 2008-05-15 (Released:2009-07-25)
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
-
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喉頭損傷型気道熱傷患者に対して,気管支ファイバー検査(fiberoptic bronchoscopy,以下FOBと略す)を行い,喉頭浮腫の病態について検討し,気管挿管適応基準を作成した。1991年11月から1997年 4 月までに,体表熱傷あるいは気道熱傷を受傷して入院し,受傷後24時間以内にFOBを行えた156例中,喉頭損傷型気道熱傷と診断された68例を対象とした。68例は,入院直後のFOB後,独自の挿管基準に従って挿管の要否が判断された。対象を挿管の有無,挿管時期,挿管理由によって以下の 5 群に分けた。すなわち,初回FOB時に喉頭浮腫の挿管適応基準に従って挿管された14例(I群),初回FOB時,喉頭所見は挿管適応基準を満たさなかったが,他の挿管基準に従って挿管された14例(II群),初回の検査で挿管適応基準を満たさなかったが,その後の経過観察で喉頭浮腫により挿管された 4 例(III群),全経過を通じて挿管されなかった33例(IV群),初回の検査で挿管適応基準を満たさなかったが,担当医の判断により挿管された 3 例(V群)に分けた。(1)I,III,IV群の喉頭浮腫と受傷後時間の関係,(2)I~IV群間の年齢,体表熱傷面積,burn index,prognostic burn index,顔面熱傷の有無,頸部熱傷の有無の関連性,(3)III,IV群間の血清総蛋白濃度,及び喉頭浮腫に影響を及ぼすと考えられる治療内容について検討した。結論:1.受傷24時間以内の初回のFOBで診断された喉頭損傷型気道熱傷のうち,48.5%は我々の挿管適応基準を用いることで,挿管不要であった。この基準は根拠のある挿管のために有用である。2.喉頭損傷型気道熱傷の喉頭浮腫のピークは,受傷 6 時間以内と24時間前後に 2 峰性に認められた。3.喉頭の浮腫形成には,喉頭の直接損傷に加えて,熱傷による全身の浮腫が増悪因子として関与すると考えられた。