著者
大保 義彦 上山 健一 村岡 新一郎 亀井 健二 松本 啓
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.59-63, 1991-01-15

【抄録】 口内清涼剤“仁丹”の長期間の過剰摂取により,顔面,爪床を中心に,青灰色の銀沈着を来たし,銀皮症を呈した精神分裂病の1例を経験したので報告する。入院時検査で,血中に高濃度に銀が存在しており,鼻唇溝部および左上腕内側部の病理組織検査で,真皮上層にびまん性に異色小顆粒の銀沈着が認められ,毛包周囲および汗腺基底膜部に特に著明であった。また,本症例は経過中に全身けいれん発作があり,脳波検査で,2〜4Hzの不規則な棘徐波複合が,広汎性に持続的に認められた。発作の原因としては,長年にわたる多量の銀摂取による中枢神経系への銀沈着による脳の器質的変化が考えられた。
著者
白谷 敏宏 井料 学 亀井 健二 森岡 洋史 長友 医継 冨永 秀文 上山 健一 松本 啓 留野 朋子 河野 一成
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.949-954, 1994-09-15

【抄録】 言語の消失,精神的不穏を主訴に受診した9歳11カ月の女児例を報告した。初めて明らかな異常に気づかれたのは7歳の時であり,それまでの発達は一見ほぼ正常に近いものであったと考えられた。その後,言語面の退行,対人・社会性の障害および執着傾向の出現がみられ,本症例はICD—10の小児崩壊性障害と診断された。本障害は現在では自閉症近縁の広汎性発達障害の1型と考えられているが,本患児の表情や態度は,これまでの多くの報告と異なり,むしろ人なつっこく,自閉症とは一線を画するものであった。また,本障害では,発症に先行する心理・社会的ストレスの存在が高率に認められることが指摘されているが,本症例においても患児が4歳の時に両親が離婚しており,障害の発症の契機と心理的ストレスの関係について考察し,この観点から本症例の発症の時期は,母親が異常に気づいた頃よりも遡る可能性があることを示した。