著者
渡辺 象 上嶋 権兵衛 鈴木 美智代 大塚 照子 中野 清剛
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.217-223, 1990 (Released:2006-07-06)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

多国語習得者の失語症の一例を報告した。症例は68歳,女性。9歳より26歳までシンガポールで生活したため英語が堪能となった。 58歳まで貿易会社に勤め,その後自宅で学生に英語を教えており英語を使用する機会は多かったが日常会話は日本語であった。 69歳時,脳梗塞により失語症となった。発症当初,発語は全く認められなかったが,回復するに従って英語が日本語よりも良好な結果を示した。多国語習得者の失語症については,欧米では多くの報告があり,その回復の過程において母国語から回復するというRibotの説,日常語が良好とするPitreの説,感情的要因を重視するMinkowskiの説が有名であるが本例ではこのいずれにも当てはまらず,母国語でもなく日常語でもなく特に感情的要因が強かったとも考えられない英語の方が良好な回復を示し,日本語の失語症と欧米の失語症とは回復の過程において異なる要因が存在する可能性があると考えられた。
著者
上嶋 権兵衛
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-15, 1995-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
69
被引用文献数
5

救急医療体制において,速やかな対応と適切なprehospital careは最も重要であり,米国における1960~1970年代の虚血性心疾患に起因する急性心臓死や増加する交通事故死が,Emergency Medical System (EMS) Actを制定させ,AHAのEEC guidelinesに“chain of survival”の概念で示されるEMSを構築させるとともにprehospital careの専門職としてemergency medical technician (EMT)制度を導入した。わが国においてもparamedicに匹敵する救急救命士(life saving technician)が平成3(1991)年に導入されたが,まだその評価は定まっていない。そこで,世界各国の救急医療体制を紹介するとともに,救急救命士誕生のわが国の救急医療体制の背景についても触れた。米国のparamedicsの現状については,わが国の関係機関の視察報告書をも参考にして,paramedic育成への関与,一般市民を含めたCPR教育への関与を示した。paramedicは基本的にはprehospital careとして,medical controlなしにプロトコールによって,気管内挿管による気道確保,静脈路の確保と輸液,除細動が認められている。最近では急性心筋梗塞のprehospital ICT,外傷救急患者の筋弛緩薬を使用した気管内挿管,2l以上の輸液がmedical controlも認められるようになっている。しかし,paramedicsに関わる問題として肝炎ウイルスやエイズウイルス感染の危険性やparamedicsが急性心筋梗塞のprehospital careとして種々な治療を行うことが病院搬入を遅らせ,院内で行うべき治療の効果を減少させる可能性などが指摘されている。以上paramedicのprehospital careの現状に文献的考察を加え,その役割について触れ,paramedic制度に対する問題点を指摘した。さらに,paramedicが行っているprehospital careと救急救命士の基本的な相違点を指摘し,わが国の救急救命士の進むべき方向性についても触れた。
著者
上嶋権兵衛
雑誌
診断と治療
巻号頁・発行日
1985
被引用文献数
1