- 著者
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上床 弥生
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.89, pp.27-48, 2011-11-30 (Released:2012-12-03)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
5
本稿の目的は,中学校における生徒文化とジェンダーの関係に注目し,ジェンダーを軸としたピア・グループの分化とそれによる秩序形成・維持のメカニズムを明らかにすることである。 その際,本稿では Wieder の「コード」概念を援用し,中学校での学級観察と生徒へのインタビュー調査から,生徒同士が共有するジェンダーに関するコードを「ジェンダー・コード」として抽出し,分析に用いた。 分析の結果明らかとなったのは,中学校の教室では,生徒の行動をコントロールするコードとして,男子と女子との間の距離化や男子優位の上下関係で行為を説明するジェンダー・コードが,圧倒的に重要なものとして存在していたことであった。フォーマルな学校教育においてはジェンダーが回避されているにも関わらず,生徒たち自身が,行為解釈のなかでジェンダー秩序を維持していたのである。 もちろん本調査でも,ある場面をめぐって男子と女子で解釈に用いるコードが対立し,ジェンダー・コード自体が揺らぐこともあった。しかし,その場合でも,生徒による再解釈過程を経て,ジェンダー・コードはさらに修復・維持されていった。 このように,本稿ではジェンダー・コードが,特に中学校の教室においてはいかに秩序維持と分かちがたく結び付き,また生徒同士の関係性においても重要なものとして機能しているのかが示されたのである。