著者
福田 明 上延 麻耶
出版者
松本短期大学
雑誌
松本短期大学研究紀要 (ISSN:09107746)
巻号頁・発行日
no.20, pp.53-59, 2011-03

本研究の目的は,介護福祉士が仕事上「役立つ」と感じる家政学概論・実習における住生活の内容把握を行い,介護福祉士養成教育に必要な家政学を検討する基礎資料とすることである.長野県内の介護老人福祉施設と介護老人保健施設で働く養成校卒の介護福祉士550人を対象に,自記式質問票調査を実施した(回収率50.4%).調査では,旧カリキュラムにおける家政学概論・実習のうち「住生活」分野について,それぞれ現在の仕事に「役立つ」(4点)~「役立たない」(1点)の4段階で評価してもらった.「概論」では,①全15項目のうち12項目(80%)の平均値が3以上,②平均値3.5以上の上位2項目が事故防止(3.58)とバリアフリーへの対応(3.56),③平均値3未満の下位項目が台所(2.84),営繕(2.95),住居の役割と機能(2.99)となった.「実習」では,①全12項目のうち9項目(75%)の平均値が3以上,②平均値が最も高かった上位2項目が室温と湿度(ともに3.48),③平均値3未満の下位項目がガス及び電気器具等の管理(2.40),水回り(2.62),ゴミ処理(2.63)となった.本研究からは,介護福祉士の多くが,概論・実習を問わず,住生活について仕事上「役立つ」と認識している傾向にあることが明らかとなった.新カリキュラム導入で全科目に占める家政学の割合が減少したとしても,事故防止や室内環境等,住生活に関するいくつかの内容について,その不足分を他科目で補足または強化していく必要性が示唆された.