著者
上村 佳代 入江 香 小山 徹平 春日井 基文 中村 雅之 赤崎 安昭
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.101-110, 2021

<p>バウムテスト(樹木画テスト)とは投映法に分類される人格検査の一種である。本研究では,刑事精神鑑定において行われたバウムテストの結果の特徴について分析を行なった。殺人(未遂)被疑事件16例と放火(未遂)被疑事件14例の計30例において,バウムの各種サイン(筆圧,位置,枝先,樹冠の豊かさ,樹冠輪郭線の有無)について性別,知的水準,診断名,被疑事件内容の観点から検討を行なった。その結果,男性の方が女性より有意に筆圧が強かった。知的に健常な群は知的障害群と比べて有意に左寄りの位置に描く傾向があった。これらの結果から刑事精神鑑定において,女性は男性ほど自己主張や攻撃性を表現せず,知的に保たれている事例では未来志向にならないことが示唆された。被疑事件内容別に比べると,放火群は樹冠輪郭線が殺人群よりも少なく,放火事例は殺人事例と比べると外界の刺激に敏感な可能性が示唆された。また,殺人既遂群は左寄り,殺人未遂群は右寄りの位置に描く傾向があり,殺人既遂事例は過去を志向する傾向がある一方,殺人未遂事例は未来を志向する傾向が示唆された。</p>
著者
山口 豊一 松嵜 くみ子 上村 佳代
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学心理学部紀要 (ISSN:24348295)
巻号頁・発行日
no.3, pp.43-53, 2021-03

本研究では,女子大学生における援助要請行動とQOL の関連を検討し,明らかにすることを目的とした。援助要請行動尺度を作成し,因子分析を行った結果,1因子5項目の尺度が作成された。女子大学生139名を対象に,QOL,居場所感,援助要請行動について質問紙調査を行い,測定した。学年差はみられなかったため,学年ごとにデータを分けず相関分析を行った。その結果,QOL,居場所感,援助要請行動の間に十分な相関がみられたため,パス解析を行った。その結果,「援助要請行動」は,「本来感」,「自己有用感」の2つを介して,「精神的健康」「自分」「家族」に影響を与えていた。また,「援助要請行動」は,「自己有用感」を介して,「身体的健康」,「友達」,「学校」に影響を与えていた。以上のように,援助要請行動は居場所感を介してQOL に影響を与えることが明らかとなった。