著者
石川 満佐育 濱口 佳和
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.526-537, 2007-12-30

本研究では,近年諸外国で研究が盛んに行われているforgivenessの概念に注目し,ゆるし傾向性として実証的に取り上げ,わが国の中学生・高校生を対象に,ゆるし傾向性と外在化問題・内在化問題との関連を検討することを目的とした。研究1では,中高生574名を対象に,ゆるし傾向性尺度の作成を行った。因子分析を行った結果,「他者へのゆるし傾向」,「自己への消極的ゆるし傾向」,「自己への積極的ゆるし傾向」の3因子からなるゆるし傾向性尺度が作成された。研究2では,中高生553名を対象に,ゆるし傾向性尺度の信頼性,妥当性の検討を行った。その結果,十分な値の信頼性,妥当性が確認された。研究3では,中高生556名を対象に,ゆるし傾向性と外在化問題(身体的攻撃・関係性攻撃),内在化問題(抑うつ・不安)との関連を検討した。相関,重回帰分析により検討を行った結果,ゆるし傾向性と外在化問題,内在化問題との間には,負の関連が示された。従って,中高生にとって,ゆるし傾向性は,外在化問題,内在化問題の軽減に有効である可能性が示された。
著者
石川 満佐育 石隈 利紀 濱口 佳和 Ishikawa Masayasu Ishikuma Toshinori Hamaguchi Yoshikazu
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.29, pp.89-97, 2005-02-28

This study was conducted to investigate the effects of other-esteem and self-esteem on self-expression. Study 1, drawing on the concept of other-esteem advocated by Hwang (2000), developed a scale of other-esteem consists ...
著者
濱口 佳和 石川 満佐育 三重野 祥子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.393-406, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
29
被引用文献数
4 6

本研究は, 中学生の反応的攻撃性と能動的攻撃性の因子構造を明らかにするとともに, これらの攻撃性と反社会的行動欲求および抑うつ傾向との関連性を明らかにするために行われた。濱口(2004, 2005)が開発した中学生用の反応的攻撃性尺度と能動的攻撃性尺度, CES-D(抑うつ尺度), 14の反社会的行動欲求項目が, 中学生男女603名を対象に実施された。検証的因子分析の結果, 反応的攻撃性, 支配的能動的攻撃性, 利己的能動的攻撃性の斜交3因子モデルが最適であることが明らかにされた。また, 抑うつ傾向には男女とも反応的攻撃性が有意な関連を示したのに対して, 能動的攻撃性は有意な関連を示さないこと, 反社会的行動欲求には男子では3種類の攻撃性のすべてが, 女子では支配的能動的攻撃性のみが有意な関連を示すことが明らかにされた。反応的攻撃性と能動的攻撃性が中学生の心理社会的適応に異なる役割を果たすこと, 3種類の攻撃性の相互相関や, これらの攻撃性と反社会的行動欲求との関連について性差が存在することが示された。また, 従来指摘されていた青年の行為障害と大うつ病性障害の併存率が, 反応的攻撃性によってもたらされる可能性があることが指摘された。