著者
上村 公一 船越 丈司
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

硫化水素(H2S)の細胞への毒性作用の機序を解明するため、ラット胎児心筋由来細胞(H9c2cells)、ラットII型肺胞上皮由来細胞(L2 cells)にH2S供与体としてのNaHSを暴露した。H9c2 cellで3mM、十数時間後から細胞質の萎縮が観察された。5mMで顕著な形態的アポトーシス様細胞死が確認され、caspase3の活性化が見られた。L2 cellsではNaHS 2-3mM、数十分後から、核凝集、細胞膜のAnnecinVとの反応、Cytochrome Cの細胞質への漏出が確認された。L2 cellsではH9c2 cellsより濃度は低く、短時間で細胞毒性が確認された。H2Sの細胞毒性は組織により感受性が異なっていた。
著者
上村 公一 吉田 謙一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

外来性あるいは内因性一酸化炭素(CO)は、NF-κBあるいはミトコンドリアのATP依存のK^+チャンネルにより、虚血またはリポ多糖類によって生起された障害から心筋と血管内皮を保護することが示されている。一方、ヘム酸素添加酵素(HO)-1は、COを生成し、細胞を保護する。私たちは、Ca^<2+>依存のプロテアーゼcalpainがα-fodrin蛋白質分解によって、低酸素下のラット心筋起源のH9c2細胞のネクローシスを促進することを示した。本研究において、私たちは、COがL-タイプCa^<2+>チャンネルを通るCa^<2+>流入を抑制することにより、H9c2細胞の虚血細胞死を抑制するという初めての証拠を示した。虚血はfluo-3蛍光によって検出される細胞内Ca^<2+>流入を増加させ、それは、L-タイプCa^<2+>チャンネル作動薬BAYK 8644によって増強された。また、色素排除法、LDH放出あるいはpropidium iodide浸透性の測定から、その細胞死はネクローシスであると確認した。Ca^<2+>流入、Western blottingで示されるα-fodrin分解、虚血細胞死は、すべてCOあるいはL-タイプCa^<2+>チャンネル抑制剤ベラパミルによって抑制された。また、蛍光色素JC-1の測定により、虚血はミトコンドリアの膜電位の低下を引き起こすが、COまたはベラパミルは抑制することも見出した。一方、虚血により、活性酸素種(ROS)生成は増加したが、COにより抑制されなかった。低酸素下ヘミン処理により、HO-1は誘導された。虚皿によるCa^<2+>流入および細胞死は、HO-1誘導により抑制された。したがって、外来性あるいは内因性COは、L-タイプCa^<2+>チャンネルよるCa^<2+>流入を抑制、および、それによるcalpain活性化を抑制することにより虚血細胞死を抑制することが明らかとなった。本研究において、私たちは、COがL-タイプCa^<2+>チャンネルを通るCa^<2+>流入を抑制することにより、H9c2細胞の虚血細胞死を抑制するという初めての証拠を示した。さらに、ミトコンドリアの関与についても研究を進める予定である。