著者
吉田 謙一 花尻 瑠理 川原 玄理 林 由起子 前田 秀将
出版者
東京医科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

ラットに腹腔内に合成カンナビノイド(sCB)の一種AB-CHMICAを投与し代謝物変化を調べた結果、ヒト急死例における迅速な代謝と臓器移行の知見は確認できなかった。ゼブラフィッシュ(Zf)用行動解析装置で同時・多数・経時的に、薬物投与後の行動を記録・解析し、死亡率を推定できる実験系を確立した。当初、この装置を利用して、sCBによる急死の機序を解明する予定であったが、法規制のため入手困難となった。そこで、 大麻(CB)成分の一つカンナビジオール(CBD)をZfに投与した後、光刺激のある“明期”、ない“暗期”を交互に反復した「ストレス負荷」の後、薬物を除去し、投与24時間の「離脱後」に同じ明暗刺激に暴露した。活動量は、投与後、濃度依存的に減少、離脱後、高濃度で活動量が増加した。明暗刺激が進むにつれ活動量が減少する「馴化」は、CBD低濃度で、投与後・離脱後に増加し、高濃度では馴化はせず、活動量が低下した。離脱後には、高濃度ほど馴化が低下し、高活動量状態を維持したZf用行動解析装置を用いてsCBによる急死の機序を解明する予定であったが、sCBを使えなくなったので、代替薬を探した。カフェインは、大量摂取すると突然死することがあるが、機序は不明である。そこで、Zfにカフェインを投与すると、容量依存性に徐脈と死を誘発したが、処置4時間後にカフェインを除去すれば、24時間後の生存率は改善された。Zfの致死性徐脈に対するカフェイン濃度は、死亡症例の血中濃度の2~5倍程度で、本実験系が、未知の物質の致死濃度の予測に有効であることが示された。5回連続、各々15分の明暗刺激に幼魚を暴露し、水泳距離分析により、暗転時の行動増加と明転時の行動減少、各々における下向き、上向きのピークが、不安行動を反映している可能性を明らかにした。本実験系が、未知の物質の不安や学習行動の評価に有用であることが示された。
著者
上村 公一 吉田 謙一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

外来性あるいは内因性一酸化炭素(CO)は、NF-κBあるいはミトコンドリアのATP依存のK^+チャンネルにより、虚血またはリポ多糖類によって生起された障害から心筋と血管内皮を保護することが示されている。一方、ヘム酸素添加酵素(HO)-1は、COを生成し、細胞を保護する。私たちは、Ca^<2+>依存のプロテアーゼcalpainがα-fodrin蛋白質分解によって、低酸素下のラット心筋起源のH9c2細胞のネクローシスを促進することを示した。本研究において、私たちは、COがL-タイプCa^<2+>チャンネルを通るCa^<2+>流入を抑制することにより、H9c2細胞の虚血細胞死を抑制するという初めての証拠を示した。虚血はfluo-3蛍光によって検出される細胞内Ca^<2+>流入を増加させ、それは、L-タイプCa^<2+>チャンネル作動薬BAYK 8644によって増強された。また、色素排除法、LDH放出あるいはpropidium iodide浸透性の測定から、その細胞死はネクローシスであると確認した。Ca^<2+>流入、Western blottingで示されるα-fodrin分解、虚血細胞死は、すべてCOあるいはL-タイプCa^<2+>チャンネル抑制剤ベラパミルによって抑制された。また、蛍光色素JC-1の測定により、虚血はミトコンドリアの膜電位の低下を引き起こすが、COまたはベラパミルは抑制することも見出した。一方、虚血により、活性酸素種(ROS)生成は増加したが、COにより抑制されなかった。低酸素下ヘミン処理により、HO-1は誘導された。虚皿によるCa^<2+>流入および細胞死は、HO-1誘導により抑制された。したがって、外来性あるいは内因性COは、L-タイプCa^<2+>チャンネルよるCa^<2+>流入を抑制、および、それによるcalpain活性化を抑制することにより虚血細胞死を抑制することが明らかとなった。本研究において、私たちは、COがL-タイプCa^<2+>チャンネルを通るCa^<2+>流入を抑制することにより、H9c2細胞の虚血細胞死を抑制するという初めての証拠を示した。さらに、ミトコンドリアの関与についても研究を進める予定である。
著者
渡辺 美穂 釜井 隆男 増田 聡雅 古谷 信隆 米沢 智子 中西 公司 神原 常仁 辻井 俊彦 吉田 謙一郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.505-509, 2004-07

32歳男性.患者は約2年前に右精巣腫瘍(病理検査ではセミノーマと診断)により高位精巣摘除術を施行した病歴があり, 今回, 左側背部痛が出現したために受診となった.所見では左第10肋骨部背側に超鶏卵大, 弾性硬の腫瘤が触知され, CTでは左第10肋骨起始部に腫瘤を認めた.更にMRIのT1強調像では同肋骨は軟部腫瘍に置き換わるように断裂し, T2強調像では高信号の腫大した軟部組織を横突起間近まで認めた.これらより吸引細胞診でセミノーマと診断し, セミノーマの肋骨への血行性転移と考え, BEP療法を行い62.5%の腫瘍縮小率を得た.しかし残存を疑い, 末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法を加え, 左第10肋骨広範切除術を行なった結果, 現在も再発は認められていない
著者
渡辺 美穂 釜井 隆男 増田 聡雅 古谷 信隆 米沢 智子 中西 公司 神原 常仁 辻井 俊彦 吉田 謙一郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.505-509, 2004-07

32歳男性.患者は約2年前に右精巣腫瘍(病理検査ではセミノーマと診断)により高位精巣摘除術を施行した病歴があり, 今回, 左側背部痛が出現したために受診となった.所見では左第10肋骨部背側に超鶏卵大, 弾性硬の腫瘤が触知され, CTでは左第10肋骨起始部に腫瘤を認めた.更にMRIのT1強調像では同肋骨は軟部腫瘍に置き換わるように断裂し, T2強調像では高信号の腫大した軟部組織を横突起間近まで認めた.これらより吸引細胞診でセミノーマと診断し, セミノーマの肋骨への血行性転移と考え, BEP療法を行い62.5%の腫瘍縮小率を得た.しかし残存を疑い, 末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法を加え, 左第10肋骨広範切除術を行なった結果, 現在も再発は認められていない
著者
清水 浩志郎 木村 一裕 吉田 謙一 伊藤 千代治
出版者
Japan Society for Snow Engineering
雑誌
日本雪工学会誌 (ISSN:09133526)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.98-106, 1994-04-01 (Released:2009-05-29)
参考文献数
6

Diffusion of studlesstires have almost completed in cold region in the winter of 1992. In proportion as studlesstires are come into wide use, road surface become slippery. And characteristics of winter traffic accidents are changing, as shown in the increase of slip accidents. For prevention of winter traffic accidents, of course, thoroughgoing countermeasures to road surface management are firstly neened. Furthermore it is necessary to improve road alignment to meet the changes of those characteristics. Also revising drivers' safety consciousness is needed to make up for countermeasures to road surfacemanagement in the circumstance when those countermeasures are still insufficient. This paper discusses countermeasures to road surface managements and road alignment and problems of drivers' sefety conciousness from analyses of characteristics of winter traffic accidents.
著者
森本 恵子 鷹股 亮 上山 敬司 木村 博子 吉田 謙一
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.マイルドな精神的ストレスであるケージ交換ストレス(CS)による血漿ノルエピネフリン(NE)増加反応は、雄ラットにのみ見られるという性差が存在し、これは昇圧反応の性差の原因と考えられる。このメカニズムとして、雄では一酸化窒素(NO)がNE増加を促進させることが示唆された。2.卵巣摘出ラットでもCSストレスによるNE増加反応が見られるが、エストロゲン補充により抑制される傾向があった。また、エストロゲン補充により安静時の血漿NO代謝産物(NOx)が増加する傾向があり、逆に、酸化ストレスマーカーである4-hydroxy-2-nonenalは低下した。3.エストロゲンの中枢神経系を介したストレス反応を緩和するメカニズムについて検討した。c-Fosタンパク質を神経細胞活性化の指標とし、各脳部位におけるCSストレスの影響とそれに対するエストロゲン補充の効果を免疫組織化学法を用いて測定した。その結果、CSストレスにより卵巣摘出ラットでは、外側中隔核、視床室傍核、弓状核、視床下部室傍核(PVN)、視床下部背内側核(DMD)、青斑核(LC)でc-Fos発現が有意に増加したが、正常雌では増加は見られなかった。しかし、卵巣摘出後にエストロゲン補充を行なうとPVN、DMD、LCではc-Fosの増加が抑制された。さらに、LCではストレスによるカテコラミン産生細胞の活性化が、エストロゲン補充により有意に抑制されることが判明した。同部位では、エストロゲン受容体αの存在が免疫染色で確認でき、エストロゲンの直接作用の可能性が示唆された。また、PVN小細胞領域では、エストロゲン補充はNO産生ニューロンのストレスによる活性化を促進することを見いだした。これはエストロゲンの抑制作用におけるNOを介したメカニズムを示唆している。以上の結果より、エストロゲンは末梢血管系においては酸化ストレス抑制作用によって、中枢神経系ではPVN、DMD及びLCの神経細胞に対する抑制作用によって、ストレス反応を緩和する可能性が示唆された。
著者
内島 豊 小林 信幸 諏訪多 順二 中目 康彦 吉田 謙一郎 斎藤 博
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.447-451, 1989-03

1987年1月より同年12月までに尿道炎あるいは前立腺炎で受診した55症例についてC. trachomatisに対する抗原および抗体価をそれぞれクラミジアザイム(EIA法)とIFA法で測定した.1)未治療の非淋菌性尿道炎症例において抗原の陽性率は44.4%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例での陽性率は20%であった.2)未治療の非淋菌性尿道炎症例においてIgG抗体価の陽性率は59.3%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例のIgG抗体価の陽性率は61.5%であった.3)非淋菌性尿道炎症例での陽性一致率は66.7%であり,陰性一致率は54.2%であった.4)未治療の前立腺炎症例では抗原の陽性率は9.1%であり,抗体価の陽性率は53.8%であった.5) IgG抗体価は治療と相関しない傾向があった.6) IgG抗体価は,治療開始後3ヵ月を経過しても正常化しなかった
著者
遠坂 顕 吉田 謙一郎 小林 信幸 竹内 信一 内島 豊 斉藤 博
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.1045-1050, 1992-09

We report 2 cases of multilocular cystic renal cell carcinoma. One was in a 33-year-old male, presenting with ultrasonic abnormality of the left kidney at an annual employee health care examination. Computerized tomography (CT) demonstrated a 5 cm of multilocular cystic mass adjacent to the lower pole of the left kidney. Another was in a 44-year-old male, presenting with microscopic hematuria at an annual employee health care examination. CT of the abdomen revealed a 6.5 cm of multilocular cystic mass on the upper pole of the right kidney. Both were diagnosed as renal cell carcinoma by the angiography and underwent radical nephrectomy. Gross specimens showed typical multilocular cystic appearance and histopathology showed clear cell carcinoma infiltrating septa and replacing epithelium of the cyst walls. Both patients are alive without evidence of disease at, 21 months and 14 months after operation, respectively. Including our cases, 51 multilocular cystic renal cell carcinoma and multilocular cystic nephroma associated with renal cell carcinoma have been reported. From the review of the literatures and the answer of the questionnaires inquiring about the outcome of the patient to Japanese reporters, the outcome of 38 patients was ascertained. The 10-year survival rates and non-recurrence rate after operation calculated by the Kaphan-Meier formula were 97.3% and 90.3%, respectively. Because of the good prognosis of reported cases, we concluded that we should choose kidney-sparing surgery for the operation of multilocular cystic renal cell carcinoma.
著者
吉田 謙一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,静的な3次元シーンにおいて,全体として不自然にならないような非透視投影図を半自動的に生成するシステムを作成することである.この非透視投影図の歪みの知覚は,人間の投影図中の奥行き手がかりの知覚と関連性が深い.なぜならば,人間は奥行き手がかりを元に3次元シーンを復元し情報を読み取っているからである.そこで,本研究では,3次元シーン中の奥行き手がかりの配置と非透視投影図の歪みの知覚との関係性を,視覚心理学実験を通して調べて行き,その結果から得られた知見を利用した非透視投影図設計システムを作成した.昨年度は,相対的大きさ手がかりが線遠近法手がかりの配置に与える制限を調べる実験を行ってきた.本年度では,その実験の測定精度を上げるため,実験方法,解析方法の改良を行ってきた.さらに,線遠近法手がかりの配置から投影図の歪みを生成するアルゴリズムの改良を行い,より複雑なシーンについても適切な歪みが生成されるようになった.また,本システムによって生成された画像の注視点分布を計測することにより,その有効性を検証した.本システムを用いて生成した歪みを全体として不自然にならないように補正した画像の注視点分布は,補正を行わない画像と比べて,透視投影図に近い注視点分布が得られていることが確認できた.また,この評価実験を通して,逆に注視点分布からその注視点分布に見合った非透視投影図の歪みを推定するという新たな方向性を見出している.